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大学入試の国語・小論文
  に関するワンポイント・アドバイス
大学入試 基礎講座 『現代文・小論文の基礎』 其の一
「現代文・小論文」 〈そもそも…〉

たとえば、クラブ活動。

ずっと一緒にがんばってきた友達が、ある日突然

「クラブ、やめる…」

と言ったとします。私たちは当然

「えっ、何で?」

と聞き返しますね。

「あ、そう」

じゃ、あまりに友達がいがないですよね。

実は、このようなところに意見文の基礎がかくれています。

私たちは、日常「あれ?」と問題に出くわすと、必ず「何で?」と問いたくなります。一休さんに出てくる「どちて坊や」ではありませんが(古いか?)、日常は「問い」に満ちています。

それなのに、なんら問題意識も持たずに「あたりまえ」だと思って過ごしている人に問題を投げかけるのが、意見文のプロ、評論家の方たちなのではないでしょうか。だから「自明(あたりまえ)」ということばが、評論文でよく批判の対象になっていますね。

ちなみに、意見文というのは基本は三点で構成されています。


問題点は何か?

・結論の根拠は何か?

結論は何か?


いいかえれば、「問題点」「論証」「結論」の三点からなっています。基本的には「問題点は一点」「それに対する結論も一点」です。その結論一点にむけて論証がなされます。センター試験や、早稲田大学の国語など、よ~く分析してみてください。基本的にはこれら三点をもとに作題されています。

傍線部にぶつかっては「?」立ち止まる。設問で聞かれて「?」考えるではいくら時間があっても足りません。現代文の勝負の分かれ目は、実は設問以前に、どれだけ本文の要約ができているかにかかっています(例外もありますが…)。センター試験の「問六」が、ほぼこの要約力を問う問題です。早稲田大学も必ず要約の問題を出します。いずれにせよ、配点が高いことにかわりありません。

それでは、「要約力」はどのようにしたら身につくのか?

あっさり言ってしまえば、近道はありません。あるとすれば、普段から上記の三点を「考えるクセ」をつけることでしょう。朝のニュースを見て、電車のつり広告を見て、友達とケンカして、「どちて?」「どちて?」と問いを発し続けることではないでしょうか。上記の例で言うなら、「クラブ活動という問題について」「やめるという結論」「それは何で?」と、論証を求めているわけです。

そもそも、現代文の設問だって、本来はより深く本文を読解させるべく、ツッコミを入れてくれているはずなのです。東京大学の問題などその典型だと思います。

中には勘違いしてやたらに虫食いにして、本文そのものが読解できない、なんてムチャクチャな問題を出す大学もありますが、もし、出題者にとって、それが「自明」なものとして前提とされているなら、私たちはそこにツッコミを入れなくてはいけませんね。

 
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【2007/06/27 20:47】 | 現代文・小論文の基礎 | トラックバック(0) | コメント(0)
大学入試 基礎講座 『古文の基礎』 其の七十七
「和歌に関する重要表現」 〈難関大学を目指す人のために!〉

受験生、最後の最後は和歌の勝負!センター試験がほぼ毎年出題していますから、国立大学受験者はもちろんのこと、早稲田、上智をはじめとする難関大学を受験する方は避けて通れません。

ひととおり文法が理解できた人は、いよいよ和歌の演習に入ってください。和歌の修辞の理解は和歌単独でやってもいいですが、やはり、文脈の中で多様な和歌を読みこなしていく必要があります。平安の物語、日記、中世の歌論など、ガンガン演習してください。ココからが演習量、「量」の勝負になっていきます。

和歌の修辞は近世江戸期の散文、地の文でさかんに使われています。実は、「和歌の修辞」は近世散文でこそ問題になると言っても過言ではありません。

文法をひととおり終えたところで、和歌で問題になる文法事項をまとめておきましょう。その上で和歌の修辞に入ってください。和歌の修辞は下記を参照してください。


 

【「~を~み」構文の訳出】 ★★★★


 

例 風いた岩うつ波のおのれのみくだけて物を思ふころかな

(風が激しいので岩打つ波のように、私だけが心を砕いて物思いをしているこの頃だなあ)

※「いた」はク活用形容詞「甚(いた)し」語幹「いた」。


・名詞「」形容詞の語幹「

 =原因理由の構文。「名詞形容詞なので


ク活用形容詞の語幹に注意してください。(シク活用は語幹と終止形が同じなので一目でわかります。)とくに例文のように仮名で書かれるとわからなくなります。「いたみ?」って「痛み!」なんてことになります。

そこで、和歌の傍線部訳が問われ、訳せない「~み」が出てきたら、とりあえず「し」をくっつけてク活用形容詞ではないか、探りを入れてみてください。

「いたし?」→「甚(いた)し!」=はなはだしい、はげしい

と類推能力を働かせ、自力で形容詞をほじくり出してください。上智など、プンスカにおうところですよ。

 

【和歌の「~こそ~已然形」強調逆接構文の訳出】★★

【「こそ~已然形」の強調逆接構文】→大学入試 基礎講座 『古文の基礎』 其の二十一

 

例 春の夜のやみはあやなし梅の花色こそ見え香やはかくるる

(春の夜の闇は道理をわきまえない。梅の花は、色は見えないものの香りは隠れようか、いや隠れない)

※和歌は句読点をうちません。だから、


・こそ~已然形/(句切れ)~ …たんなる強調

・こそ~已然形、~…下に続いて逆接


どちらなのか、文脈から自分で判断しなくてはなりません。係助詞「こそ」を受けて「ず」の已然形「ね」です。和歌全体の意味を考えてみます。

色は見えない←→香りは隠れない

と、前後があいいれない、矛盾する関係性になっていますね。よって、この場合はそのまま下に続けて(「~ね。」と句切れにしないで)逆接で解釈します。

 

【和歌の「らむ」の訳出】★★

【「らむ」の現在推量/原因推量】→大学入試 基礎講座 『古文の基礎』 其の五十九

和歌の原因推量「らむ」において、原因を問う疑問語「など・なに」等が省略されてしまう場合があるので注意が必要です。事実が目の前にあるのかないのかで判断すること。


事実が目の前にない現在推量

事実が目の前にある原因推量

(原因の表現がなかったら原因を問う疑問語の省略と考えられる。)

 

例1 憶良らは今はまからむ子泣くらむそれその母も吾を待つらむ

(私はもうおいとまいたしましょう。今ごろ家では子供が泣いているだろう。その母親も今ごろ私を待っているだろうよ。)

※山上憶良(やまのうえのおくら)は今、宴会の席で家を思って詠んでいる、といった状況です。母子は家で待っているのだからその事実は眼前にない、よって現在推量なんです。ちなみに「まからむ」は「まから(未然形)」+「む」。

 

例2 春霞なに隠すらむ桜花散る間をだにも見るべきものを

(春霞はどうして隠しているのだろう。せめて桜が散る間だけでも見たいのになあ)

※春がすみが桜の花を隠しているのは目の前の事実でしょう。眼前にないどこか遠くの場所(現在推量)とは考えられません。眼前の事実である以上、原因推量なんです。


なに」…〈原因を問う疑問〉

「春霞~隠す」…〈眼前の事実〉

 →「らむ」=原因推量

 

例2 春の色のいたりいたらぬ里はあらじ咲ける咲かざる花の見ゆらむ

(春の風情がたどりつく里、つかない里の区別はあるまい。それなのにどうして咲いている花、咲いていない花が見えているのだろう。)

※「見ゆ」といっているのだから事実は目の前にあります。眼前の事実である以上、やはり原因推量なのです。原因推量「らむ」は必ず原因の表現とともに使われるのでしたね。ところが原因を表す表現がどこにもありません。そこで、原因を問う疑問語「など・なに」等の省略と考え、自分でおぎない、「など咲ける咲かざる花の見ゆらむ」として原因推量で解釈しなくてないけません。


など」…〈原因を問う疑問〉

「咲ける咲かざる花の見ゆ」…〈眼前の事実〉

 →「らむ」=原因推量


ちなみに、今年のセンター試験、和歌の説明で出したやつです。「らむ」は和歌で多用されるので、ほんとうに注意が必要です。「わからん」と…ってもういい?

 

【「なくに」の訳出】★


和歌の「~なくに

・文末で用いて…詠嘆(~ないことだなあ

・文中で用いて…逆接(~ないのに)・順接(~ないのだから

 

例 深山には松の雪だに消えなくに都は野辺の若菜摘みけり

(山奥ではまだ松の雪さえ消えていないのに、都ではもう野辺の若菜を摘んでいることだなあ)

・「(打消「ず」の上代未然形)」+「(準体助詞)」+「(格助詞)」

なんて、品詞分解はいろいろ説明がされていますが、どうでもいいです。とりあえず、


なくにないのに


だけでも訳せるようにしておきましょう。たま~に聞かれますから。

 

以上、和歌をめぐる修辞、解釈は難解です。情報量が「五七五七七」の三十一文字(みそひともじ)しかないのだからあたりまえですね。だから、結局は文脈類推能力が求められてきます。早稲田、上智、センター国語。難解だからこそ、難関大学で出す!あたりまえですよね。理屈より場数、受験生が最後には演習量の勝負になるというのは、和歌の解釈が典型なのです。

 

最後に、一週間後に文法全体の「総復習テスト」をやりましょう。ひととおりおさらいして力試しにやってみてください。

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【2007/06/23 21:45】 | 古文の基礎 61-80 | トラックバック(0) | コメント(0)
大学入試 基礎講座 『古文の基礎』 其の七十六
「識別」 〈三大識別「なり」「なむ」「に」〉

記事が長くてすみませんね。

文法の総仕上げですから、かえって分けないほうが一覧しやすいだろうと考えました。ボクシングでいうなら最終ラウンドなんですね。ドトーのようにラッシュをかけていきますよ。今年のセンター試験で出しましたね。

 

【「に」の識別】★★★★★

格助詞「に」「にて」…体言・連体形(連体形の場合、下に体言が補える)に接続。

基本的に体言に付き、下の動詞にかかっていきます。「学校行く」の「に」。「学校(体言)」に接続し、「行く(動詞)」にかかっています。「体育館にて全校集会を行う」の「にて」。「体育館(体言)」に接続し、「行う(動詞)」にかかっています。

 

接続助詞「に」…連体形に接続(下に体言が補えない)

・順接(~すると・~ので

・逆接(~のに・~けれども

どちらも表現します。「主語~述語」は接続助詞「に」の上で完結するため、下にかかっていく動詞がありません。「我学校に行く、彼行かず」の「に」。「行く(連体形)」に接続し、かかっていく動詞がありませんね。

 

完了の助動詞「ぬ」の連用形「に」…活用語の連用形に接続し、「にき・にけり・にけむ」と他の助動詞と複合する。

 

断定の助動詞「なり」の連用形「に」…体言・連体形に接続。

・「~にあり」で「である」と訳せる。「あり」は断定の表現を補助する補助動詞と考える。「に」と「あり」の間には係助詞や接続助詞が入る場合が多い。

※断定の「なり」連用形「に」、および「にあり」「に侍り・に候ふ」「におはす・おはします」の断定以外の表現については断定「なり」の項を確認してください。

【断定「なり」の連用形「に」】→大学入試 基礎講座 『古文の基礎』 其の六十四

・「~にて」で「~である。そして、」または「~であって、」と訳せる。

格助詞「にて」との識別が問われます。下記で詳述。


ナ変動詞「死ぬ」「往ぬ」の連用形「死に」「往に」の活用語尾

 

ナリ活用形容動詞の連用形の活用語尾…「なり」で言いきって様子・状態を表現する。

 

7副詞の一部…副詞は基本的に活用せず、用言(動詞・形容詞・形容動詞)を修飾していく。

 

例1、2、6 ねむごろ言ひける人「こよひ逢はむ」とちぎりたりける

(親切に言い寄った男に「今夜逢おう」と約束すると、)

※形容動詞「ねむごろなり」の連用形「ねむごろに」。「~なり」と言いきって「親切だ、丁寧だ」と様子・状態を表現します。

・「人に」の「に」は格助詞。「人(体言)」に接続し、動詞「ちぎる」にかかっています。

・「けるに」の「に」は接続助詞。助動詞「けり」連体形「ける」に接続し、間に体言が補えないし、下にかかっていく動詞がありません(省略しているけど…)。

 

例3 心は君によりしものを

(心は君に寄りそっていたのになあ)

※「寄る」の連用形「より」に接続し、「にき」の形をとっています。完了「ぬ」の連用形と一発でわかります。当然、過去の助動詞「き」も活用語なので活用します。「し」は「き」の連体形。

 

例4 わが身一つの秋あらねど

(私だけに訪れた秋はないけれど)

※「秋(体言)」に接続し、「(は)あり」で「~である」と訳せますね。よって「に」は断定「なり」連用形。「あり」は補助動詞。あいだに「は(係助詞)」が入った形です。「私だけの秋である」と断定している(打消していますが)のであって、「秋」に何かが存在しているわけではないでしょ?

例えば「学園祭いつあるの?」「学園祭は秋あり」と言ったら、学園祭がどの時期に存在するかをいっています。存在を表したら「に」は格助詞、「あり」は普通の動詞、動詞は「存在・動作」の表現でしたね。

 

例4 (『徒然草』は)あぢきなきすさびにて、かつ破り捨つべきものなり。

(『徒然草』は、つまらないなぐさみごとであって、すぐに破り捨てるべきものだ。)

 ※「すさび(体言)」に接続し、「~である。そいして」または「~であって」と訳せます。よって「に」は断定「なり」連用形。「て」は接続助詞。

・こんな『徒然草』なんかつまらないなぐさみごとである

(and)

・こんな『徒然草』なんかすぐに破り捨てるべきものである

「~なり(断定)。て(=and)、~なり(断定)」と、前後で「主語~述語」が完結していますね。これが格助詞「にて」と決定的に異なります。下記の格助詞「にて」と比べてみるとわかりますが、格助詞「にて」は必ず下の動詞にかかっていきます。

 

例1、5 狩けり。

(狩に行った。)

※「狩に」の「に」は格助詞。「狩(体言)」に接続し、動詞「往ぬ」にかかっています。

・「往に」の「に」はナ変動詞「いぬ」の連用形活用語尾。ナ変動詞「死ぬ」「往ぬ」と漢字で書くとバレバレですが、仮名書きで「しに」「いに」と書かれると、とたんに難しくなります。「ゐにけり」だったら、ワ行上一段「居(率)る」連用形「ゐ」、「に(完了)」「けり(過去)」ということになりますが…。

【早稲田レベルのひっかけ】→大学入試直前講座 『古文のドツボ』 其の一

 

例7 つひ行く道とはかねてききしかど、

(最後に通って行く死出の道とは以前から聞いていたけれど、)

※「つひに」は活用がなく、動詞(用言)「行く」を修飾しています。よって副詞です。副詞は「すでに」などもそうですが、「つひなれば」「すでならず」という表現がないでしょ?つまり活用がない、形容動詞ではないんですね。

 

【格助詞「にて」の確認】

※「にて」で一語の格助詞の場合は、体言・連体形(連体形の場合は下に体言が補える)に接続し、必ず動詞にかかっていきます。上記の1、格助詞「に」と全く同じです。全然重要ではありませんが、受験生が必ずひっかかるところです。格助詞「にて」の「に」だけに傍線を引くと、受験生はみんな「断定」とひっかかります。ひっかけの王様なんですね。ひっかからないためにだけ、意味をひととおりたどっておきましょう。覚える必要はありません。たどるだけでOK!。


・場所…~において ~で

・時間・年齢…~で

・状態・資格…~として ~で

・方法・手段…~で

・原因・理由…~のために ~によって

・材料…~で


例 ねがはくは花の下にて春死なむ

(願うことなら桜の花の下春に死のう)

※「下(体言)」+「にて(場所)」→死ぬ(動詞)

 

例 十二にて御元服し給ふ

(光源氏は十二歳元服なさる)

※十二(体言)+「にて(年齢)」→元服す(動詞)

 

例 ただ人(うど)にておほやけの御後ろ見をす

(臣下として朝廷の補佐をする)

※ただ人(体言)+「にて(資格)」→後ろ見す(動詞)

 

例 深き川を舟にて渡る

(深い川を舟渡る)

※「舟(体言)」+「にて(手段)」→渡る(動詞)

 

例 我朝ごと夕ごとに見る竹の中におはするにて知りぬ

(私が朝夕仕事で目にする竹の中にいらっしゃることによって存在がわかった)

※おはする(「おはす」連体形)+コト(形式名詞)+「にて(原因)」→知る(動詞)

 

例 女のはける沓(クツ)にて作れる笛

(女がはいている木の靴作った笛)

※「沓(体言)」+「にて(材料)」→作る(動詞)

 

以上、受験生が迷うところなので、最後にもう一度まとめておきましょう。


・体言にあり…「である」と訳せる

 →断定「なり」連用形+補助動詞「あり」

・体言にあり…「~にある」「~にいる」と存在を表している

 →格助詞「に」+動詞

※「あり」が丁寧「はべり」「さぶらふ」、尊敬「おはす」「おはします」になっても判断基準は同じです。「断定」なのか「存在」なのか、必ず訳して確認してください。ちなみに「はべり」「さぶらふ」については謙譲「お仕えする」もありますよ。


・体言にて…「~である。そして」「~であって」と訳せる

 →断定「なり」連用形+接続助詞「て」

・体言にて…下の動詞にかかっていく

 →格助詞「にて」

※格助詞「に」「にて」か断定「なり」連用形「に」かで迷った時には、常にこの判断基準にしたがってください。

 

以上、メチャメチャこまかいですが、早稲田、上智レベルの受験を考えているのなら、このレベルまでおさえてください。だって、これらの大学でバレバレの「に」の識別を出すわけが、ない!

文法、終わった~!!


 
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【2007/06/22 20:47】 | 古文の基礎 61-80 | トラックバック(0) | コメント(0)
大学入試 基礎講座 『古文の基礎』 其の七十五
「識別」 〈三大識別「なり」「なむ」「に」〉

 

【なむ】の識別】★★★★★

 

1 ~なむ~連体形。 …係助詞「なむ」

基本的には文中で用いられ、文末は連体形で結ぶ。ただの強調で訳す必要はない。

 

2 未然形なむ。 …あつらえ(他に対する希望)の終助詞「なむ」

 ・あつらえ(他に対する希望=~してほしい)

を表現する。基本的に文末で用いられる。

 

3 連用形なむ。 …強意の助動詞「ぬ」未然形「な」+推量・意志の助動詞「む」

・強い推量(きっと~だろう)

・強い意志(きっと~しよう)

・可能推量(~できるだろう)

・適当(~するのがよい)

などを表現する。これも基本的には文末で用いられる表現。

【「む」…「連用形+てむ・なむ」】→大学入試 基礎講座 『古文の基礎』 其の五十

 

4 死なむ・往なむ …ナ変動詞「死ぬ・往ぬ」未然形+推量・意志の助動詞「む」

 

例1 あはれなりつる心のほどなむ忘れむ世あるまじき。

(思いやり深かったあなたの心づかいを忘れる時はないだろう。)

※文中で用いられ、文末が「連体形。」(打消推量の助動詞「まじ」連体形「まじき。」)となっていることに着目。基本的に文中で使われていたら係助詞くさいです、が、必ず結びを確認すること。当然、実戦ではバレバレの形では出しません。係助詞「なむ」の結びの省略は、「なむ」の識別問題のお約束のヒッカケ選択肢、みんなひっかかります。

 

例 いと恥づかしうなむ

(とても恥ずかしいことでございます。)

※係助詞「なむ」。結び「侍る(丁寧の補助動詞)」等が省略されています。

シク活用形容詞「恥づかし」の本活用連用形「恥づかしく」のウ音便に接続しています。形容詞の本活用連用形に「なむ」が接続していたら、補助動詞「あり」「侍り(候ふ)」「おはす(おはします)」が省略されていますよ。


これを上記の3、「連用形+なむ」ととったら大間違いです。3の「な」は助動詞だから形容詞に接続する場合は補助活用連用形に接続し、

・恥づかしかりなむ

という形になるはずです。形容詞の補助活用がどのような働きをするのかおさえておくのが重要だというのがわかりますね。


ちなみに、上記2、「未然形+なむ」終助詞も、形容詞には補助活用に接続し、

・恥づかしからなむ

となります。だから、本活用に接続した場合は係助詞「なむ」に決まるのです。

その他、形容詞に限らず、文脈上分かりきっているものはガンガン省略します。例えば、歌について言っている文脈で「歌をなむ。」とあったら、結びを「詠む(連体形)」と補って、「なむ」は係助詞ということになります。場数を踏むべし、です。

 

例2 いつしか梅咲かなむ

(はやく梅が咲いてほしい。)

※「咲く」未然形に接続し、あつらえの終助詞。副詞「いつしか」は意志や                          希望の表現と呼応し「はやく~」と訳します。


 

例3 寝ざらむもわろかりなむ

(寝ないでいるのもきっと良くないだろう。)

※形容詞「悪(わろ)し」の補助活用連用形「悪かり」に接続し(上記の「恥づかしくなむ」と比べてみよう)、強意の助動詞「ぬ」未然形「な」+「む」。ここでは強い推量「きっと~だろう」の意です。

 

※未然形・連用形が同形の活用語(上一段・下一段・上二段・下二段)に接続した場合、接続を見ても、上記の2か3か識別できません。文脈から判断するしかありません。頭の中に即座に「あつらえ・強い推量・強い意志・可能推量・適当」の五つの選択肢を思い浮かべ、適切な訳を選んでください。以前にあげたあげた例文をもう一度検証してみましょう。

 

例 飛び降るとも降(お)りなむ

(飛び降りても降りることができるだろう。)

※「降り」は上二段活用「降る」。未然形も連用形も同じ「降り」です。

未然形なら上記2、連用形なら上記3、接続を見ても判断できませんね。

文脈は、『徒然草』において、木登り名人が「木から降りて来る時にナメてかかってケガをするものだから注意しろ」といっている文脈です。ナメてかかっているということは、木登りをしている者が不可能さの度合をあまく見ているわけです。だから、3の可能推量で訳したいのです。木登りをする者自身が思っている内容ですから、2「飛び降りてほしい」(他に対する希望)はおかしいのです。

 

例 うつたへに忘れなむとにはあらで、

(全く忘れてしまおうというわけではなくて、)

※「忘れ」は下二段活用「忘る」。未然形も連用形も同じ「忘れ」です。

未然形なら上記2、連用形なら上記3、接続を見ても判断できませんね。

文脈は、『土佐日記』において、筆者、紀貫之の奥さんが、死んだ娘のことを思い出して悲しんでいるシーン。「忘れる」というのは、「うつたへに忘れなむ」と思っている奥さん自身の動作なので、3の強い意志で訳したいのです。推量・意志の表現「む・べし・じ・まじ」は、その人自身の動作について使われていたなら意志という傾向があるからです。2、「死んだ娘のことを(他の誰かに)忘れてほしい」と思う母親がはたしているでしょうか?

 

例4 願はくは花の下にて春死なむ

(願うことなら桜の下で春に死にたい。)

※ナ変動詞「死ぬ」未然形「死な」の活用語尾+意志の助動詞「む」。

「死なむ」「往(去)なむ」の形をとったら誰でもわかりそうなものですが、かな書きで「しなむ」「いなむ」と出されたら、なかなかやっかいですよ。それが実戦ということ。

サ変動詞「す」の連用形「し」?とか、ヤ行上一段動詞「射る」の未然形・連用形「い」?とか、ワ行上一段「居る・率る」?とか、選択肢が急に増えてきます。文脈の中で訳していくしかないのです。たかだか「なむ」の識別でも、結局は文脈の読解能力が問われることになります。センター試験、早稲田、上智レベルだったらここまで想定しておかないと、なのです。

【早稲田レベルのひっかけ】→大学入試直前講座 『古文のドツボ』 其の一

 

 

以上、受験生、最後の最後は演習量の勝負!といい続けてきた意味がわかりますね?
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【2007/06/21 22:07】 | 古文の基礎 61-80 | トラックバック(0) | コメント(0)
大学入試 基礎講座 『古文の基礎』 其の七十四
「識別」 〈三大識別「なり」「なむ」「に」〉

さて、文法の総仕上げ。三大識別「なり」「なむ」「に」をやっていきます。これらをクリアすれば、文法は卒業、あとはガンガン演習をこなすのみ、やればやるほど雪ダルマ式に実力がついていきます。

 

【「なり」の識別】★★★★★

 

伝聞・推定の助動詞「なり」…終止形(ラ変には連体形)に接続

伝聞(~そうだ・~という)…うわさの文脈で用いられていたら伝聞。

推定(~ようだ)…音、声のする文脈で用いられていたら推定。


 

断定の助動詞「なり」…体言・連体形に接続

断定(~である)

※「場所なる名詞」の形をとったら存在(~にある)

 

3ナリ活用形容動詞

 

4ラ行四段動詞「成る」

 

基本は、接続をしっかり確認することです。

 

例1 をとこもすなる日記といふものを、(男の人も書くという日記というものを、)

…伝聞の助動詞「なり」連体形。サ変動詞「す」終止形に接続している。

例2 をんなもしてみむとてするなり。(女も書いてみようと思って書くのである。)

…断定の助動詞「なり」終止形。サ変動詞「す」連体形「する」に接続している。

 

注Ⅰ・終止形と連体形が同じ活用語(四段活用・上一段活用など)に接続する場合、および、ラ変(型)活用語の連体形に接続する場合(伝聞・推定の「なり」は終止形接続の助動詞だからラ変(型)には連体形に接続)は接続から判断できません。その場合は、文脈をもとにして判断します。

(a)うわさの文脈だったら伝聞。

(b)音、声のする文脈だったら推定。

(c)それ以外は断定と考える。

 

例(a)「奥山に猫またといふものありて、人をくらふなる」と人のいひけるに、

(「山奥に猫またというものがいて、人をとって食うそうだよ」と人が言ったところ、)

※「くらふ」は四段活用で終止・連体同形、接続からはわかりません。話題が山奥の化け物の話だし、まわりの人が言っているところから、うわさの文脈と考え伝聞と判断します。

 

例(b)山のたぎつ瀬音まさるなり

(山の急流の音がいっそう激しくなるようだ。)

※「まさる」は四段活用で終止・連体同形、接続からはわかりません。文脈に「音」とあるから(聴覚による)推定と判断します。ココ、いちばんつっこまれるところです。「音・声→推定」要チェックですよ。

 

注Ⅱ・ただし、次の場合は確定します。


(a)「鳴くなり」「衣(ころも)打つなり」の「なり」は推定。

(b)「撥音便(無表記)+なり」は伝聞・推定。

 

例(a)鴨ぞ鳴くなる 山かげにして

(カモが鳴くようだ。山陰で)

※「鳴く」は四段活用で終止・連体同形、接続からはわかりません。「鳴く」ということはそもそも音、声がしているわけだから(聴覚による)推定と判断できます。

「鳴くなり」「衣打つなり(冬の着物を出してトントンたたく)」とも『新古今和歌集』などで、多用された表現です。ということは、中世歌論などで論じられたりして…。早稲田大学、上智大学など、いかにも出題しそうなところです。

 

例(b)駿河の国にあなる

(駿河の国にあるという山)

※「あるなる」の形だったら「ある」はラ変の連体形だから、断定「なり」も伝聞・推定「なり」も接続できます。しかし、ラ変(型活用語)の撥音便(無表記)というのは、すでに見てきたとおり、推定「なり・めり」の上でおこるものなので、撥音便の下に「なり」とあったら、伝聞・推定の助動詞とわかります。伝聞か推定かは文脈しだいです。


・「あるなり」…文脈から断定か伝聞・推定か判断。

・「あ(ん)なり」…伝聞・推定に確定。


以上、撥音便の無表記パターンをおさえるのがいかに重要か、これでわかりますね。「なり」の識別に決定的にかかわるからです。「撥音便+なり=伝聞・推定」って、文法全体を通じていちばん出るところですが、撥音便を読めないことにははじまりません。

【推定「なり」「めり」にともなう撥音便】→大学入試 基礎講座 『古文の基礎』 其の六十二

 

注Ⅲ・形容詞(型)の活用語に接続する場合。


(a)断定は本活用の連体形に接続し「~きなり」の形をとる。

(b)伝聞・推定の助動詞は補助活用の連体形に接続し「~かるなり」の形をとる。


ただし、形容詞(型)の補助活用はラ変に活用するため、撥音便を起こし、「~かんなり」、さらに無表記となって「~かなり」の形をとる場合もあります。

撥音便をおこさず「~かるなり」の形でも、形容詞(型)補助活用の連体形に接続しているので伝聞・推定と判断できるし、撥音便をおこして「~か(ん)なり」となっても先の注Ⅱ(b)から伝聞・推定と判断できます。

 

例(a)艮(うしとら)の方より吹き侍れば、この御前はのどけきなり

(北東の方角から風が吹きますので、こちらの御前は穏やかなの。)

※ク活用形容詞「のどけし」本活用連体形「のどけき」に接続しているので、断定。

ちなみに、これは、形容詞の本活用に助動詞が接続する唯一の例外です(ふつう、助動詞は補助活用に接続します)。


 

例(b)安らかに身をふるまふことも、いと罪重かなり

(気楽にふるまうのもたいそう罪が重いということだ。)

※ク活用形容詞「重し」補助活用の連体形「重かる」が、ラ変型活用語であるため撥音便をおこして無表記になっています。「撥音便+なり」から伝聞・推定と判断できます。

撥音便をおこさず「重かるなり」の形でも、補助活用の連体形に接続していることから、断定ではない、伝聞・推定と判断できます。こまかいですが、ココまでおさえておけば、あとは何をどうきかれても対応できるはずです。

 

例3 蚊やり火ふすぶるもあはれなり

(蚊遣り火がくすぶっているのもしみじみと趣き深い。)

※ナリ活用形容動詞「あはれなり」の活用語尾です。「~なり」で言いきって、様子、状態を表現していたら形容動詞です。

主な形容動詞は重要単語としておさえているはずですから、文法的にアプローチしなくてもだいたい形容動詞とわかるはずです。

ちなみに「~なり」の形は形容動詞ですよ。「げ」ってきたら形容動詞とおさえましょう。「きよげなり」「うつくしげなり」など。

 

例4 子となり給ふべきひとなめり。

(私の子お成りになるはずの人であるようだ。)

※四段動詞「成る」連用形。「なめり」の「な」は断定「なり」連体形「なる」の撥音便の無表記です。

四段動詞「成る」は、だいたい「~に成る」「~と成る」の形をとります。他に「生(な)る」(=実る)、「慣る」(=慣れる)、「鳴る」等の動詞が考えられますが、いずれにしろ文脈上、なにか動作を表現しているはずです。
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【2007/06/20 13:53】 | 古文の基礎 61-80 | トラックバック(0) | コメント(0)
大学入試 基礎講座 『古文の基礎』 其の七十三
「副詞」 〈呼応(陳述)の副詞〉

助動詞、助詞も終わりました。いよいよ仕上げに入っていきます。

副詞は、「呼応の副詞」をしっかりおさえておきましょう。「おーい」と呼べば「はーい」と応える関係だから「呼応の副詞」なんて言われています。「陳述の副詞」とも言います。

口語訳の問題、あるいは虫食い問題でよく出ますね。数もそんなにありませんし、「覚えればおしまい」という文法は、実はいちばんラクチンなのです。

 

【呼応の副詞一覧表】★★★

 

〈打消表現との呼応〉

あへて~打消…まったく~ない

おほかた~打消… 

かけて~ 打消… 

さらに~ 打消… 

すべて~ 打消… 

たえて~ 打消… 

つゆ~  打消… 

つやつや~打消… 

よに ~ 打消… 

をさをさ~打消…少しも、めったに~ない

いたく~ 打消…あまり~ない

  ~ 打消…~できない(不可能)

よも~じ(打消推量)…まさか~ないだろう

いさ~知らず…さあ、どうだかわからない

※打消表現「ず・じ・まじ・で・なし」

 

※「よも」は打消推量「じ」としか呼応しません。「よも~打消」ではありませんよ、「よも~じ(打消推量)」と覚えましょう。ひっかけの王様ですよ。

※「いさ」は「知らず」という表現と呼応します。「いさ~打消」ではありません。「いさ~知らず」です。「いさ、知り給へず」と下二段、謙譲「給ふ」が入ったりして。バリエーションはいろいろありますが、ひっかけられないようにしてください。特にも「いさ」と「知らず」の距離が離れたときに注意が必要です。虫食い問題の王様、語群に「いさ」とあったら、どこかに必ず入るはずですよ。

 

〈禁止表現との呼応〉

ゆめ(ゆめゆめ)~禁止…決して~するな(強い禁止)

あなかしこ ~  禁止 …   

な ~ そ ~しないでくれ、してくれるな(やわらかい禁止)

※禁止表現「~な・~べからず・~まじ」

 

〈希望・意志表現との呼応〉

いつしか~希望・意志…はやく~したい、しよう、してほしい

いかで~ 希望・意志…なんとかして~したい、しよう、してほしい

※希望表現「ばや・てしがな・にしがな がな・もがな・(未然形+)なむ

        ・まほし・たし」

 意志表現「む・べし・じ・まじ」

 

〈仮定表現との呼応〉

たとひ~とも…たとえ~としても

※「とも」は逆接仮定表現

 

〈疑問・反語表現との呼応〉

いかで(か・かは)~推量の助動詞(む・らむ・けむ・べし・まし)

         ~助詞(ぞ・か)

…疑問 どうして・どのようにして~か

 反語 どうして~か、いや、~ない

 

【いかで(副詞)~む(連体形)】 ★★★★

 

「む」が意志なら(なんとかして~しよう

「む」が推量なら、(疑問=どうして~か

(反語=どうして~か、いや~ない

 

文脈に応じて訳し分けます。

「いかでか」の形ならほとんど反語、まれに疑問。「いかでかは」の形ならだいたい反語、という傾向はありあます。とはいえ、疑問か反語かはあくまで文脈しだいです。文脈上、あるいは常識的に答えがわかりきっているのに、わざわざきいているなら反語です。

 

以上、電車の行き帰りにでも覚えてしまいましょう。一往復で覚えてしまいます。

 
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【2007/06/19 16:22】 | 古文の基礎 61-80 | トラックバック(1) | コメント(1)
大学入試 基礎講座 『古文の基礎』 其の七十二
「助詞」 〈終助詞〉

文のおしまいで使われるので、終助詞。

終助詞は希望、願望の表現をしっかりおさえましょう。詠嘆の表現はべつに訳し落としたからどうということもありませんし、直接問われることもないでしょう。終助詞にかぎらず、希望、願望の表現は、とにかく記述で出る傾向がありますから、高配点の問題になりやすいのです。早稲田大学、上智大学なら虫食いで出すでしょう。助動詞「まほし」「たし」とともに、ここでしっかりおさえておきましょう。


 

【希望の終助詞】★★★★★

 

ばや (希望・未然形接続・~したい

てしがな(希望・連用形接続・~したい

にしがな(希望・連用形接続・~したい

 

※自己の希望をあらわすグループです。「ばや・てしがな・にしがな=~したい」とセットにしておさえましょう。虫食い問題になる可能性もあるので、接続もおさえておきましょう。

 

例 世の中に物語といふもののあんなるをいかで見ばやと思ひつつ、

(世の中には物語というものがあるそうだが、なんとかして読みたいと思っては、)

※上一段動詞「見る」未然形「見」に接続。

副詞「いかで」は意志や希望の表現と呼応し、「なんとかして」と訳す。

【呼応の副詞】→後日、詳述していきます。

 

例 いかでこのかぐや姫を得てしがな

(なんとかしてこのかぐや姫を手に入れたいものだ、)

※下二段動詞「得(う)」連用形「得(え)」に接続。

 

例 いかで心として死にもしにしがな

(なんとかして思いどおり死にたいものだ。)

※サ変動詞「す」連用形「し」に接続。

 

 

がな (願望・~であればなあ、~があればなあ、~がほしいなあ

もがな(願望・~であればなあ、~があればなあ、~がほしいなあ

 

※あることがらの実現を望む表現です。上記の希望と区別して「願望」といわれたりしますが、呼び方はさまざまです。呼び方はどうでもいいので、上記「ばや・てしがな・にしがな」とは別モノとして考えてください。文脈に応じていろいろ訳します。場合によっては「~したい」と訳す場合もあったりして…。場数をふんで、いろいろな文脈で訳していきましょう。接続は、体言、格助詞など、さまざまですので、特におさえる必要はありません。とにかく、しっかり訳出できるようにしましょう。

 

例 いかで大納言をがな

(なんとかして大納言の位がほしいなあ。)

 

例 世の中にさらぬわかれのなくもがな

(世の中に死別というものがないとよいのになあ。)

※「さらぬ別れ」=避けられない別れ=死別

 

 

なむ  (あつらえ=他に対する希望・未然形接続~してほしい

 

※他者に対する希望(あつらえ)をあらわします。いわゆる三大識別問題、「なむ」の識別に決定的にかかわる終助詞ですので、「未然形接続」をしっかりおさえてください。

 

例 小倉山みねのもみぢ葉心あらばいまひとたびの行幸(みゆき)待たなむ

(小倉山の峰の紅葉の葉よ、お前にもし心があるなら、

もう一度あるはずの帝のお出ましを散らずに待っていてほしい。)

※四段動詞「待つ」未然形「待た」に接続。

 

例 いつしか梅咲かなむ

(はやく梅が咲いてほしい

※四段動詞「咲く」未然形「咲か」に接続。

副詞「いつしか」は意志や希望の表現と呼応し、「はやく」と訳す。

【呼応の副詞】→後日、詳述していきます。

【「なむ」の識別】→後日、詳述していきます。

 

以上、「ばや・てしがな・にしがな」は機械的に訳をおさえればOK。「がな・もがな」は演習量をこなして場数をふむこと(特にも国立大学を受ける人、記述になりますよ)。「なむ」は識別しっかり、どれもこれも出る!しかも高配点。点差をひろげる大チャンスです。

 

 

【反語の終助詞】★★

 

ものかは  (反語・連体形接続・~だろうか、いや、~ない

 

いちおう、反語もやっておきましょうか。和歌でもよく使われるし、反語の表現は上智大学をはじめ、意訳をしてくるところでは大好きなツッコミどころです。

 

例 車の簾(すだれ)はかけられけるものかは

(牛車のすだれなどかけることができようか、いや、できない

※「られ」は「らる」の連用形。打消・反語の文脈で使われたら可能。


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【2007/06/18 17:11】 | 古文の基礎 61-80 | トラックバック(2) | コメント(2)
しり上がり通信 其の三
20070617184708.jpg

<消防団から学んだこと 2>

「アンチ グローバリズムとしての共同体」ということを前々回に書きました。

アメリカ型の「グローバリズム」を要約すれば、「自己責任」と「自由」なのだろうと思います。個人は、その身に負う責任の度合いに応じて自由を獲得する、といった価値観でしょう。

それに対して、「共同体」を要約すれば、「連帯責任」と「束縛」なのだろうと思います。個人の責任が厳しく問われることもないかわりに、個人は集団による束縛をうけます。

前者は、9・11のニューヨークでのテロから、今日のイラク戦争まで、まるで巨大噴火のあとの火山灰のように世界をモヤッと押しつつんでいます。

で、日本はどうする?

そこで、小泉元総理大臣が思いっきり「アメリカ型グローバリズム」の方に舵をきりました。その結果、「勝ち組/負け組」、「格差社会」といった言説がまんえんしています。「グローバル」ということばが持っている意味の広がりのわりに、価値観は狭隘(きょうあい)だったりします。日本はこのままアメリカのあとを追ってグローバリズムの道を突き進むのでしょうか?

ところが、どっこい、などと私には思えるのです。

おととし、佃島で四年に一度の住吉神社の大祭があり、私は連日出かけて拝見させていただきました。巨大な八角形の宮神輿が入っている倉をひょいとのぞくと、歴代の青年団やらの旗に混じって「佃愛国青年団」と、名称はうろ覚えなのですが、ふる~い旗がかざってありました。戦争の時代には「愛国青年」がかついだのか…、と感慨深いものがありました。住吉神社は、全国でいちばん分社の数が多いものと記憶しておりますが、その必然として、軍神をまつるのに役立ってきたのです。

戦争は敗れ、「愛国青年団」も解体し、で、神輿の担ぎ手はいなくなったのかというと、どっこい、長屋に住まう人々やら、超高層マンションに住まう人々やら、何百人もが列をなしてシズシズと海の向こうまで神輿を運んでいきます。

日常、日本橋の魚河岸、今日の築地市場を支えてきた男たちにとって、イデオロギーなど知ったこっちゃなかったのです。ただ「住吉神社」があるのみ。土地の守り神がいるだけなのです。

消防団も、江戸の火消しの流れをくんで…、などといわれるわりには、どうも旧帝国陸軍のにおいがします。消防団の小さな帽子を「戦闘帽」と呼んだりしますし…。

でも、やはり、イデオロギーなんか知ったこっちゃないのでしょう。江戸の火事は、町方、民間人の手をかりて初期消火につとめないと、都市そのものが丸焼けになってしまったことでしょう。それは震災が想定される今日の都市においても同様だと思います。人と人とをつなぐ紐帯(ちゅうたい)として、ただ「火事」があるばかりなのです。

私は、政治のことはよくわかりません。けれども、小泉元総理大臣は何も、ただアメリカのグローバリズムの後追いをしたわけではないような気がしています。ライオンがわが子を谷に突き落とすように、日本社会をアメリカ型のグローバリズムの海に、あえて投げ入れたのではないでしょうか。その先、そこからまたワシワシ這い上がってくる「共同体」の力を誰よりもよく知っていた人ではなかったかと、今になって思っております。



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【2007/06/17 18:54】 | しり上がり通信 | トラックバック(0) | コメント(2)
大学入試 基礎講座 『古文の基礎』 其の七十一
「助詞」 〈副助詞「だに」「すら」「さへ」 3〉

「だに」は類推「~さえ」、「すら」は類推「~さえ」と訳していると、つい同じノリで「さへ」を「~さえ」と訳したくなります。そこにドツボがまっています。「さへ」は添加で「~までも」と訳すこと。「さへ=までも」と覚えましょう。

 

【副助詞「さへ」…添加】★★★★★ 

 

添加の構文 … A~、Bさへ~ = (Aが~、Bまでも~)

 

※前の内容「A」に対して、「Aばかりでなく、その上さらにB~」と、「B」の内容を付け加える表現です。何に何を加えているのか、「A」と「B」の内容を確認するのがミソです。

ちなみに漢文でいえば

 

不唯A、B~

=唯(た)ダニAノミナラズ、B~)

(Aだけでなく、その上さらにBまでもが~)

 

の累加形がこれと同じ表現です。

平安時代、「さへ」は添加でしか使われませんでした。「さへ」が類推で使われ出すのは中世からです。その名残りで、今、私たちは古文の類推「だに」「すら」や、漢文の抑揚「スラ」を「~さえ」と訳しているのです。メンドクサイ、なやまし~。

でも、受験生が読むのは、ほとんど平安の作品なのだから、ここは一つ腹をくくって「さへ=までも」と覚えてしまいましょう。「さへ」をつっこむなら、添加でしか問題にしないはずです。

 

例 (桐壺帝)ただ涙にひちて明かし暮らさせ給へば、見奉る人さへつゆけき秋なり。

(桐壺帝は、ただ涙にぬれて夜を明かし日を暮らしなさるので、それを見申し上げる人までもが涙がちになる秋である。)

※「桐壷帝(A)が泣いている」

それだけでなく、その上さらに

そのお姿を見申し上げる人(B)までもが泣いている」

と添加しているのがわかりますか?

 

以上。

出題パターンとしては、


1単純な口語訳。「さへ=までも」で選択肢を洗うと五者択一が二択になる、選択肢を消す小ネタとしてよく使えます。

2「さへ」の虫食い問題。空欄の前後が添加の関係になっていることを読み取るのがポイントです。


いずれ、副助詞「だに・すら・さへ」は機械的に訳を覚えてもしようがないということを肝に銘じてください。構文の機能そのものがわかっていないと解けない問題が多いのです。しかも高配点の問題にからみますよ。

普段、演習する際にこれら「だに」「すら」「さへ」の表現は、文脈でどのように機能しているのか確認しながら読むのがポイントです。やっぱり場数の勝負になっていきますね。
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【2007/06/17 14:54】 | 古文の基礎 61-80 | トラックバック(1) | コメント(0)
大学入試 基礎講座 『古文の基礎』 其の七十
「助詞」 〈副助詞「だに」「すら」「さへ」 2〉

類推の構文は理解できましたか?

類推構文は「~さえ」と機械的に訳を覚えても使いものになりません。構文の機能そのものが問われます。文脈でどういう働きをするのか、おさえておかないと、そもそも設問の指示が読みとれない、ということになってしまいます。

たとえば、「傍線部の下に省略されている内容は何か」と指示、傍線部に「だに」とあって「まして」以下の類推内容(程度の重いもの)を答えさせる問題なのに、一所懸命「省略」されている内容を探していたりして…。

それに対して、「最小限の条件」は機械的に意味をおさえるだけです。

 

【副助詞「だに」…最小限の条件】★★★★★

 

最小限の条件の構文 


(最小限のもの)だに

  意志せめて《最小限のもの》だけでも~しよう

  希望(          ~したい・してほしい

  仮定条件(              ~ならば

  命令(                  ~しろ

※「だに」の下にこれら「意志・希望・仮定条件・命令」といった表現がなかったら類推と考える。

 

例 物をだにきこえ。御声だに給へ

せめてお話だけでも申しあげようせめてお声だけでもお出しください。)

※「む」は意志、「給へ」は「給ふ」の命令形。

 

例 今はとて忘るる草の種をだに人の心にまかせずもがな

せめて、もうこれまでと、私を忘れる草の種だけは、恋しいあの人の心にまかせたくないものだ。)

※「もがな」は希望の終助詞。

【仮定条件】→後述(すぐやります)

 

例 この願ひだに成就しなば、悲しむべきにあらず。

せめてこの願いだけでも成就したなら、悲しむべきではない。)

※完了の助動詞「ぬ」未然形「な」+「ば」=仮定条件。


 

例 散りぬとも香をだに残せ梅の花

(散ってしまうとしても、せめて香りだけでも残せ。梅の花よ。)

※「残せ」は「残す」の命令形。

 

以上、機械的に訳せればOK。「意志」「希望」「仮定条件」「命令」をそれぞれきちんと取れるようにしておくことがポイントです。
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【2007/06/16 12:58】 | 古文の基礎 61-80 | トラックバック(0) | コメント(0)
大学入試 基礎講座 『古文の基礎』 其の六十九
「助詞」 〈副助詞「だに」「すら」「さへ」 1〉

ほんとうに最後の一山、副助詞です。

副助詞は「だに」「すら」「さへ」をしっかりおさえればOKです。どれもこれもよく出るし、出ると配点が高い、オイシイところです。

 

【副助詞「だに」「すら」…類推】★★★★★

類推の構文

<程度の軽いもの>だにすら)~、まして<程度の重いもの>~。

=<程度の軽いもの>でさえ~、

ましてや<程度の重いもの>はなおさらだ

 

※「まして」以下はよく省略されます。省略されても「程度の重いもの」を自然に類推できるので「類推」です。類推の構文をとるときは、「だに(すら)」の下の「~」という点で「程度の軽いもの」はなんなのか、「程度の重いもの」はなんなのか、確認するのがミソです。

類推の副助詞は「すら」(上代)→「だに」(平安)→「さへ」(中世)と時代によって使われる副助詞が変わっていきます。だからメンドクサイ。現在、われわれが古文の類推表現や漢文の抑揚表現を「~さえ」と訳しているのは中世のなごりなんですね。

出題パターンは、

1 単純な口語訳。

2 「だに」とあって、「まして」虫食い、あるいはその反対、「まして」があって「だに」虫食い。

3 「まして」以下の省略、その類推内容を答えさせる。

と、多様に問題を作れます。だから、出るんですね。

特にも、類推というのは一種の強調表現ですから、文脈のクライマックス、本文のおしまいの方、いちばんオイシイところで用いられたりします。出題者としては、どうしても問題にしたいところなんです。特にも上記の「3」、配点が高いですよ。ということは点差をつけるチャンス!

 

例 いづれの人と名をだに知らず。

(どこの人か名前さえ知らない。)

※人物を知らないという点で「名」はまだ表面的で程度の軽いもの。人物を知らないという点で程度が重いのは性格や人柄でしょう。以下に程度の重いもの、

まして人柄を知らないのはなおさらだ

という内容が類推できます。

 

例 聖(ひじり)などすら前(さき)の世のこと夢に見るはいと難(かた)かんなるを、

(聖などでさえ前世のことを夢に見るのはたいそう難しいそうだが、)

※「聖」は、徳の高い僧侶です。さんざん仏道修行をした「聖」は仏道のプロ、いかにも前世の事を夢に見ることができそうな人ですね。

前世の事を夢に見るのが難しいという点に関しては、「聖」は程度が軽いもの(あまり難しくない人)といえますね。前世など夢に見ることができない点で程度が重いのは、修行などしていない一般の人間。以下に程度の重いもの、

まして普通の人が前世を夢に見るのが難しいのはなおさらだ

という内容が類推できます。

 

以上、「まして」以下の類推内容、立教大学がよく出していますが、まあ、どこでも出すでしょう。早稲田大学ならもう一ヒネリ入ってきそうです。

いずれ高配点の問題になるので、100%ゲットできるように訓練をつみましょう。普段、いろいろな文脈の中で、「だに(すら)」があったら、程度の軽いもの?重いもの?と確認するクセをつけましょう。

ちなみに、漢文でいえば、


抑揚形…AB、

スラ且(か)ツB、況(いはん)ヤヲヤ

(AでさえBなのだから、ましてCにおいてはなおさらだ


が同じ構文です。「B」という点で程度の軽いのが「A」、程度の重いのが「C」、同じでしょ?程度の軽いものでいったん「抑(おさ)え」ておいて、程度の重いものを「揚(あ)げ」ていくから「抑揚」なんですね。名前はちがっても構文はまったく同じです。

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【2007/06/15 14:14】 | 古文の基礎 61-80 | トラックバック(1) | コメント(0)
大学入試 基礎講座 『古文の基礎』 其の六十八
「助詞」 〈「未然形+ば」以外の仮定条件〉

「未然形+ば(接続助詞)」で仮定条件。それにちなんで、仮定条件をまとめておきましょう。仮定条件は反実仮想「まし」や最小限の条件「だに」など、いろいろな重要な構文にからみますから、どんな形でも仮定条件(~ならば)を取れるようにしておかなくてはいけません。

また、仮定条件単独でも、びっくりするぐらい問題になっています。五者択一、仮定条件を訳しているのは二つ、あとは文脈から正解肢を選ぶというパターンです。選択肢を消す小ネタとして使えるようにしておきましょう。

 

【仮定条件】★★★


1 活用語の未然形+「(接続助詞)」

=仮定条件(~ならば・~としたら


2 形容詞、形容詞型活用の助動詞(べし・まじ・まほし・たし)

 の本活用連用形(無く・べく・まほしく・たく)+「(係助詞)」

=  〃  (    〃     )


3 打消の助動詞「ず」連用形「+「(係助詞)」

=  〃  (    〃     )

 

※形容詞、形容詞型活用の本活用未然形、「無く」「べく」「まじく」「まほしく」「たく」、打消「ず」の未然形「ず」を認めるか認めないかというのは、この仮定条件の説明の仕方によります。

・未然形+「は(接続助詞「ば」のにごらないかたち)=仮定条件

と説明している辞書、参考書もあります。私は「連用形+係助詞」で説明していきますが、みなさんが悩む必要はありませんよ。とにかく仮定条件が訳せればそれでOKです。

 

例1 狂人のまねとて大路を走らば、すなはち狂人なり。

(狂人の真似だといって大通りを走ったならば、とりもなおさず狂人である)

※「未然形+ば(接続助詞)」と、スタンダードな仮定条件。

 

例2 鴬(うぐいす)の谷より出づる声なくは春来ることを誰か知らまし

(うぐいすが谷から出てきて鳴く声がなかったら、春がくることを誰がわかるだろうか、いや誰もわからないだろうに)

※形容詞「無し」本活用連用形「無く」+「は(係助詞)」で仮定条件。何だろうが仮定条件をともなった「まし」は反実仮想でしたね。反実仮想が、さらに反語になっているのでちょっとややこしい。

【反実仮想】→大学入試 基礎講座 『古文の基礎』 其の五十三


例2 ゆく蛍(ほたる)雲の上まで往ぬべくは秋風吹くと雁(かり)に告げこせ

(行く蛍よ、雲の上まで飛んで行くことができるなら、こちらでは秋風が吹いていると雁に告げてくれ。)

※形容詞型活用の助動詞「べし」本活用連用形「べく」+「は(係助詞)」で仮定条件。「べし」は、ここでは可能。「こせ」は上代のあつらえ(~してほしい)の表現。

 

例2 屋島へ帰りたくは、三種の神器(じんぎ)を都へ返し入れ奉れ。

(屋島へ帰りたいなら、三種の神器を都へお返し申しあげろ。)

※形容詞型活用の助動詞「たし」本活用連用形「たく」+「は(係助詞)」で仮定条件。

 

例2 かやすき程こそ、すかまほしくは、いとよくすきぬべき世に侍りけれ。

(気軽な身分の者は、浮気がしたいなら、いくらでも浮気ができるにちがいない世なのでございました。)

※形容詞型活用の助動詞「まほし」本活用連用形「まほしく」+「は(係助詞)」で仮定条件。

 

例3 女あるじにかはらけ取らせよ。さらずは飲まじ。

(女主人に杯を与えて酒を飲ませなさい。そうでなかったら私も飲むまい。)

※助動詞「ず」連用形「ず」+「は(係助詞)」で仮定条件。

 

以上、特に「2」と「3」は、選択肢を消すネタでよく使えますよ。
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【2007/06/14 19:19】 | 古文の基礎 61-80 | トラックバック(1) | コメント(0)
大学入試 基礎講座 『古文の基礎』 其の六十七
「助詞」 〈主な接続助詞〉

前後の接続関係をあらわす助詞です。主なものは次のとおり。

 

未然形=順接仮定条件

  …もし~ならば、


已然形=順接確定条件(原因理由)

  …~ので、


・終止形(形容詞・連用形)+とも=逆接仮定条件

  …たとえ~としても、


・已然形+ど・ども=順接確定条件

  …~けれど、

 

どうでもよいとは思うのですが、文法用語の解説しておきましょう。大事なわけではありません、悩むだけ時間のムダだからです。

「順接」の「順」は訓読みすれば「順(したが)う」、前の内容に「したがえ」ば、自然とのちの内容が導き出されるので「順接」です。

「逆接」は、前の内容と後の内容があいいれない、文字通り「逆」の関係になります。

「仮定」は、動作がまだ動作はおこなわれていない、「仮定」された状態にあります。

「確定」は、動作はもうおこなわれている、「確定」された状態にあります。

 

例 もし早く行ったならば、彼に会えるよ。

※わざわざ早く行くのだから、会えて当然(順接)、「行く」動作はまだおこなわれていません(仮定)。

例 早く行ったので、彼に会えたよ。

※わざわざ早く行くのだから、会えて当然(順接)、「行く」動作はもうおこなわれています(確定)。

例 たとえ早く行ったとしても、彼には会えないよ。

※わざわざ早く行く、それなのに会えないのはおかしい、あいいれない関係(逆接)、「行く」動作はまだおこなわれていません(仮定)。

例 早く行ったけれど、彼には会えなかったよ。

※わざわざ早く行く、それなのに会えないのはおかしい、あいいれない関係(逆接)、「行く」動作はもうおこなわれています(確定)。

 

訳すことができればそれでよいのですが、あまりに生徒に質問されるところなので解説しました。「こんな感じ」というのがわかればそれでOK。

ちなみに、現代文において、「逆接」は最重要ですので、「~としても」が逆接なのは、知っておいてソンはありませんよ。
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【2007/06/13 10:38】 | 古文の基礎 61-80 | トラックバック(1) | コメント(0)
しり上がり通信 其の二
<消防団から学んだこと>

中沢新一先生が新刊『ミクロコスモス』の中で、レヴィ・ストロースを引用しつつ、「共同体と組合」について書いておられました。

北方モンゴロイドが氷河期、凍った海を渡ってこの日本列島に入ってきたとき、互いに力を合わせないことには厳しい自然を生き残ってゆくことはできなかったであろうと想像されます。

狩猟のときには、日常の組織とは別の体系をくみ上げて命がけでけだものに飛びかかっていったことでしょう。日常とおなじ「ノリ」で狩猟をする「たわけもの」がいたなら、その個人の生命ばかりか、他の仲間の生命を危険におとしいれるかもしれません。そこには厳しい「おきて」が必要になってきます。

たとえば、「マタギ」と呼ばれた狩猟民が、日常の「生活共同体」をいったん解体し、厳しい「おきて」とともに、「ことば」まで変えて山に入っていくように。

たとえば、佃島の住吉神社をまつる人々が、巨大な宮神輿をかつぐとき、日常生活をともにしてきた「生活共同体」を解体し、「若衆」「年寄」「世話人」といった「組合」を組織してシズシズとエレガントに神輿をかついで海に出ていくように。

20070613155955.jpg

写真の一番が私ですが、となりにいる方は葬儀屋さんです。葬儀屋さんや洋服屋さんの中に添削屋がいる風景、まあ、結果はビリッケツとはいうものの、私個人としてはとても美しい風景なのです。日常、まったく「畑違い」の人間が集まって、まるで一個の生命体のようにワシワシ動いて水を出して火を消す。これを合(向)目的的「組合」とみなすなら、おそらく、私たち日本人の祖先が何万年も繰り返してきた営みに、私もつらなることができたのかな、などと考えております。

 

ちなみに、お隣の分団の大先輩のブログを紹介させていただきます。ほんとうに亀戸という町に対する愛情がよく伝わってきます。

 
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【2007/06/12 16:40】 | しり上がり通信 | トラックバック(0) | コメント(1)
大学入試 基礎講座 『古文の基礎』 其の六十六
「助詞」 〈同格の格助詞「の」〉

無事、助動詞の山を越してきましたか?

助動詞を終えて、いよいよ助詞に入っていきます。夏前に文法を仕上げましょう。

このブログの編集方針は「どうでもいいヤツは後まわし、出るヤツを徹底的に!」でしたね。助詞もその方針にしたがってやっていきます。助詞なんて、重箱のスミをほじくりだしたらキリがないんだから、格助詞については、とにかく同格「の」をおさえてしまう。それでおしまいです。

 

【同格の格助詞「の」】★★★

 

~名詞++~連体形、~ =同格「

 

連体形の下に「の」の直前の名詞を補うと、「~名詞=~連体形(名詞)」と、前後が同じ名詞を表現します。主格や目的格など、下の文脈に前後の名詞が同じ格となって続いていくので同格といいます。「の」は「で」と訳します。

 

例 白き鳥嘴(はし)と脚と赤き、~遊びつつ魚(いを)を食ふ。

(白い鳥くちばしと脚とが赤い鳥が遊びながら魚を食べている。)

※形容詞「赤し」本活用連体形「赤き」の下に「の」の直前の名詞「鳥」を補うと「白き鳥=嘴と脚と赤き(鳥)」と前後は同じ「鳥」を表現します。下の文脈に同じ主格となって続いていくでしょ?

「白い鳥遊びながら魚を食べている」

「くちばしと脚とが赤い鳥遊びながら魚を食べている」

ね、だから「同格」なんです。何も主格にかぎらず、同じ格になるから「同格」。

 

その他も見ておきましょうか。

例 私名前。あなた本。

いわゆる普通の「の」、訳して「の」は連体格(連体修飾格)。

例 これ誰(もの)?それ私(もの)。

「~の名詞」と訳せる、あるいは何か名詞が省略されているのは隼体格。体言に準じた使い方をしているんですね。日常生活でよく使っています。

例 バラくちびる。

訳して「~のような」と訳せるのは比喩です。やっぱり普通に使っています。

 

以上、問われるのは同格でしょうが、×の選択肢にひっかからないために、その他おおぜいも一応見ておきましたよ。

格助詞「が」は、「の」と同じと考えてください。「が」にも同格はありますが、おそらく同格「が」は出ないでしょう。きっと正解がもめることになりますから…。早稲田大学がたま~にシブイところをつっこんできますが、まあ、キリないですからね。
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【2007/06/12 14:30】 | 古文の基礎 61-80 | トラックバック(0) | コメント(2)
大学入試 基礎講座 『古文の基礎』 其の六十五
「助動詞」 〈「べし・まじ」〉

推量・意志「む」をひっくり返したのが打消推量・打消意志「じ」でしたね。

「む」をさらに強めた感じが「べし」、「じ」をさらに強めた感じが「まじ」です。

助動詞「べし」をひっくり返せば「まじ」になります。

 

「べし」は「す・い・か・と・め・て」なんてゴロでよく暗記してたりして?

推量 …~だろう・~にちがいない

意志 …~しよう・~するつもりだ

可能 …~できる・~できるだろう

当然 …~はずだ・~べきだ

命令 …~しろ

適当 …~するのがよい

それをそっくりそのままひっくり返せば「まじ」になります。

打消推量 …~ないだろう

打消意志 …~するまい

不可能  …~できない・~できないだろう

打消当然 …~はずがない・~べきではない

禁止   …~してはいけない・~するな

不適当  …~しないほうがよい

つまり、「べし」の意味をひととおりおさえたら、「まじ」は特におさえる必要はないでしょ?ゼッタイこの意味で訳すべき!といった厳密なものではないので、文脈に応じて適当に訳せればそれでOKです。

 

む →打消→ じ

強意   ↓強意

べし→打消→まじ

 

図式化すればこんな感じです。
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【2007/06/11 16:59】 | 古文の基礎 61-80 | トラックバック(1) | コメント(0)
大学入試 基礎講座 『古文の基礎』 其の六十四
「助動詞」 〈断定「なり」 2〉

【断定「なり」の連用形「に」】★★★★★

 

・体言・連体形+(断定「なり」連用形)+あり(補助動詞)

~である …断定

 

・   〃    〃          +侍り・候ふ(丁寧の補助動詞)

~でございます …断定の丁寧表現

 

・   〃   〃           +おはす・おはします(尊敬補助動詞)

~でいらっしゃる …断定の尊敬表現

 

でしたね。でも、カタチで判断してはいけません。必ず訳してみて「~である」と断定を確認すること。カタチが同じでも以下のような場合があるからです。

 

※「にあり」の形でも、存在を表していたら、「に」は格助詞、「あり」は普通の動詞。

例 ペンは机の上にあり

 

※「に侍り(候ふ)」の形でも、存在を表していたら、「に」は格助詞、「侍り・候ふ」は本動詞・「あり」の丁寧「あります・ございます」。

例 テキストは机の上に侍り

 

※「に侍り(候ふ)」の形でも、「貴人の前に~・貴所に~」という文脈だったら、「に」は格助詞、「侍り・候ふ」は本動詞・「仕ふ」謙譲「お仕え申し上げる・ひかえる」。                        

例 清少納言は中宮定子様にさぶらふ女房なり。

 

※「におはす(おはします)」の形でも、存在を表していたら、「に」は格助詞「おはす・おはします」は本動詞・「あり」尊敬「いらっしゃる」。

例 校長先生は校長室におはします

 

以上、説明がこまかくなりましたが、出るヤツは徹底的に!という編集方針でしたね。それと断定連用形「に」のもう一つのパターン、「にて」です。

 

・体言・連体形+(断定「なり」連用形)+(接続助詞)

   …~であって

 

必ず訳して、「~である。そして~」「~であって」と断定を確認するのがミソです。

例 月の都の人にて父母あり。

(わたくしは月の都の人である。そして月には父母がいる。)

(わたくしは月の都の人であって、月には父母がいる。)

 

ゼッタイにカタチで判断してはいけません。訳して断定を確認すること。

まったく同じ形ですが、体言・連体形に「にて」と接続し動詞にかかっていったら格助詞「にて」です。連体形の場合は何か体言が補えるはずです。

 

体言・連体形+にて(格助詞)→動詞

動詞に対して場所や時間、原因などを表現している。

 

例 間もなく体育館にて全校集会を行います。生徒の皆さんは~

 

なんてアナウンスが学校でもよくかかりますね。古文も現代語も同じです。「体育館」と体言に接続し、「行う」という動詞にかかっていることを確認してください。

この「動詞にかかっていくか、いないか」が格助詞と断定を判断するミソです。断定「にて」は「~である。そして~」と文がいったん完結するのに対し、格助詞「にて」は必ず動詞にかかっていくのです。

いちおう言っておきましょう。格助詞「にて」の「に」だけに傍線を引くと、受験生は面白いぐらい「断定」とひっかかるものです。「ひっかけ」の王様なんですね。

いずれにしろ、断定の連用形「に」をとるポイントは、

 

・体言・連体形+にあり …~である

・体言・連体形+にて …~である。そして、~であって

 

と、訳してみて断定を確認することです。わかりましたか?
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【2007/06/10 17:55】 | 古文の基礎 61-80 | トラックバック(1) | コメント(0)
大学入試 基礎講座 『古文の基礎』 其の六十三
「助動詞」 〈断定「なり」 1〉

さあ、ラスト一山、ここをこえれば文法問題で点数をかせげるようになりますよ。いわゆる三大識別問題「なり」「なむ」「に」のうち、「なり」と「に」のカタがついてしまいます。

「助動詞」とは読んで字のごとく、「動詞をお助けすることば」なのですが、例外的に体言(名詞)・連体形に接続する、それが断定の助動詞「なり」です。活用は形容動詞ナリ活用とまったく同じです。

断定は「たり」もありますが、まあ、無視しましょう。出ませんから(でも、大昔、早稲田の政経かなんかで「と」を出したことがありましたが…ムシムシ)。

 

【断定「なり」の連用形「に」】★★★★★

・今年のセンター試験で出ましたね。体言・連体形に接続し、「にあり」の形で「である」、「にて」の形で「であって」と訳せる「に」は断定の助動詞なりの連用形です。

 

・体言・連体形+(断定「なり」連用形)+あり(補助動詞)

~である …断定

 

・   〃      〃     +侍り候ふ(丁寧の補助動詞)

~でございます …断定の丁寧表現

 

・   〃     〃   +おはすおはします(尊敬補助動詞)

~でいらっしゃる …断定の尊敬表現

 

※「にあり」で断定を表現していたものが「なり」になったといわれています。断定「なり」の古い形なんですが、いつまでも残っていく、で、いつも「あり」の上にあるから連用形としたんですね。

「にあり」とはいっても、実際は接続助詞や敬助詞が間に入って使われます。

・「体言あり。」(体言である。)

・「体言こそあれ。」「体言ある。」(体言である。)

なんて具合です。

 

・~+や・か(疑問の敬助詞)あら+む(推量助動詞連体形)。

 =~であろうか。 …断定の疑問

 

などその典型例なんですね。出るんだこれが…。断定の疑問などしょっちゅう使われるので、よく省略されます。

 

・~や(か)。 …「あらむ」の省略

 

で、「に」に傍線、「に」ってな~んだ?って問題、「に」の識別でいちばん出るやつですよ。

「おのづから慰むかたもあるや、」

って、今年のセンター試験で出ていますね。いずれ「に」の識別のところで徹底的に解説していきましょう。とりあえず、「にや(か)。」で「に」が断定「なり」の連用形と説明できるように。「~であろうか」と断定の疑問を訳せるように。解釈の問題にもなります。「大学入試 基礎講座 『古文の基礎』 其の二十」参照のこと。

ちなみに、「あり」が補助動詞ってナンデ?という素朴な疑問もわいてくるでしょう。敬語の感覚からすれば動詞にくっつくんじゃないの?と。

へ理屈を言いましょう。動詞の定義は「動作(~する)・存在(いる・ある)」をあらわすのでしたね。ところが、上記の「あり」「はべり・さぶらふ」「おはす・おはします」はいずれも「動作・存在」の表現ではありません。断定の表現です。で、動詞とはいえないだろう、しょうがないから「に」にくっついて断定を補助する補助動詞、と考えたわけです。

 

例 わが身一つの秋あらねど

 (私だけに訪れた秋はないけれど)


※このように、「にあり」の形とは言ってもほとんどの場合「に」と「あり」の間に接続助詞や係助詞などがはさまります。ここでは係助詞「は」がはさまっていますね。


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【2007/06/08 21:35】 | 古文の基礎 61-80 | トラックバック(1) | コメント(0)
大学入試 基礎講座 『古文の基礎』 其の六十二
「助動詞」 〈推定「なり」「めり」 2〉

さてさて、いよいよ山場です。もう一息!

 

【ラ変型活用語・連体形+推定の助動詞「なり」「めり」→撥音便の無表記】★★★★★

推定の助動詞「なり」「めり」は終止形接続ですが、終止形接続の助動詞は全てラ変型活用語には連体形に接続します。ラ変型活用語連体形が推定「なり」「めり」に接続すると撥(はつ)音便(「ン=撥音」に音が変る)をおこして無表記の形になる場合があります。(「べし」の上でおこす場合もあり)

ちなみに、「撥」は訓読みすると「撥(は)ねる」、ピョンとはねる音なので「ン」を撥音といいます。

 

ラ変型活用語・連体形

    「~」+「なり」「めり」

      ↓

撥音便「~なり」「~めり」

       ↓

      無表記

  ※(読むときには「ン」を補う)

 

ラ変動詞「あり」連体形「あ

…「あめり」「あなり」→「あなり」「あめり」


形容詞補助活用連体形「~か

…「~かめり」「~かなり」→「~かめり」「~かなり」

例「良かめり」「美しかなり」

 

形容動詞補助活用連体形「~な

…「~なめり」「~ななり」→「~ななり」「~なめり」

例「あはれななり」「美しげなめり」

 

ラ変型助動詞完了「たり」連体形「た

…「ためり」「たなり」→「ためり」「たなり」

 

形容詞型活用助動詞「べし」「まじ」連体形「べか」「まじか

…「べかめり」「まじかめり」→「べかめり」「まじかめり」

  「べかなり」「まじかなり」→「べかなり」「まじかなり」

 

形容動詞型活用助動詞断定「なり」連体形「な

…「なめり」「ななり」→「なめり」「ななり」

 

特殊型活用助動詞打消「ず」連体形「ざ

…「ざめり」「ざなり」→「ざめり」「ざなり」

 

※断定の助動詞「なり」の上で撥音便は決して起こさないので、「撥音便+なり」の「なり」は伝聞・推定の助動詞と決まる。

 

例 この世に生まれては願はしかるべきことこそ多かめれ

(この世に生まれると、こうありたいと願うはずのことが多いようだ。)

※形容詞「多し」補助活用連体形「多かる」撥音便の無表記。形容詞、下に助動詞がくるときは補助活用、補助活用はラ変型活用語でしたね。忘れていませんか?

 

例 すずろなる死にをすべかめるかな。

(思いがけない死に方をしなければならないようだ。)

※形容詞型活用助動詞「べし」補助活用連体形「べかる」撥音便の無表記。形容詞型活用の助動詞は、形容詞と同じあつかいでしたね。

 

例 「上こそ。この寺にありし源氏の君こそおはしなれ

(おばあさま。この寺にいた源氏の君がいらっしゃったそうだ。)

※完了の助動詞「たり」連体形「たる」撥音便の無表記。撥音便のあとの「なり」は伝聞・推定に決まる。(ゼッタイ断定ではない)ここでは伝聞。

 

例 大納言拍子取って、「信濃になる木曾路川」)

(大納言は拍子をとって、「信濃にあるという木曽路川」

※ラ変動詞「あり」連体形「ある」撥音便の無表記。撥音便のあとの「なり」は伝聞・推定に決まる。(死んでも断定ではない)ここでは伝聞。

 

以上、これまでの文法事項の総復習でしょ?だ・か・ら、山場なんです。

緊急避難的には、


「あ・か・ざ・た・な」+「なり」「めり」=撥音便の無表記


でもいいのですが、それはお子様のおさえ方です。ヒネリが入ると簡単にひっかけられてしまうので、あまりオススメできませんね。

「撥音便+なり=伝聞・推定」はマジで使えますよ!!というか、いちばん出るところです。
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【2007/06/07 21:43】 | 古文の基礎 61-80 | トラックバック(4) | コメント(0)
大学入試 基礎講座 『古文の基礎』 其の六十一
「助動詞」 〈推定「なり」「めり」〉

さあ、いよいよ山場を越えますよ。推定「なり」「めり」、それらにともなう撥音便、そして断定「なり」、ここを越えれば後は難しいところはありません。あとは副助詞ぐらいでしょう。

まあ、だまされたと思ってこの山を越えてみてください。文法全体がボチボチ見えてくるはずです。

 

【推定「なり/めり」の違い】★★★

「推量」と「推定」のちがいは、「推量」が根拠も何もなしに使われるのに対し、「推定」は根拠をともなって使われることです。根拠がある分、推量よりは「定か」なんですね。「めり」は視覚を根拠とし、「なり」は聴覚を根拠とします。

 

めり…視覚推定(~ようだ

対象を目で見て、視覚にもとづいて推定する。

推定(~ようだ)…主体←←←目で見ている←←←対象

 

例 (光源氏)のぞき給へば、(尼君が)すだれ少しあげて、(仏に)花奉るめり

(光源氏がのぞきなさると、すだれを少し上げて、仏に花を差し上げるようだ。)

※四段動詞「奉る」終止形に接続しています。光源氏がのぞき見しているシーン、視覚による推定だとよくわかりますね。

ちなみに、「めり」には婉曲(~ようだ)がありますが、気にする必要はありません。視覚による根拠をともなわない、断定を避けて遠まわしに表現しているだけです。いずれ、「めり」は「~ようだ」と訳せばOKです。

 

なり…聴覚推定(~ようだ)・伝聞(~ということだ・そうだ

対象を目で見ていない。音や声で聞き、聴覚にもとづいて推定する。耳から入ってくる情報がうわさであったなら伝聞。 

  音・声の文脈 … 推定

  うわさの文脈 … 伝聞

推定(~ようだ)…主体←←←耳で聞いている←←←対象

伝聞(~そうだ)

 

例 秋の野に人まつ虫のなり

(秋の野で人を待つという松虫の声がするようだ

※サ変動詞「す」終止形に接続しているので伝聞・推定の助動詞「なり」、文脈に「声」とあるから推定です。ちなみに「まつ」は「待つ/松」の掛詞

 

例 また聞けば侍従の大納言の御むすめなくなり給ひぬなり

(聞くところによると、侍従の大納言の娘がおなくなりになったということだ。)

※完了「ぬ」終止形に接続しているので伝聞・推定の助動詞「なり」、文脈に「また聞けば」とうわさを表す表現があるので伝聞とわかる。

 

以上、推定「なり」「めり」はどちらも「~ようだ」と訳すものの(伝聞はおいといて)、推定する根拠が決定的にちがうんですね。そのちがいをここでしっかりおさえましょう。前回のセンター試験の×選択肢のように、ビミョーなひっかけでよく使われたりして。

また、「なり」については、のちのち「なり」の識別という最重要事項が待っていますから、伝聞・推定ともにその根拠づけをしっかりできるようにしておきましょう。
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【2007/06/06 17:30】 | 古文の基礎 61-80 | トラックバック(2) | コメント(0)
大学入試 基礎講座 『古文の基礎』 其の六十
「助動詞」 〈超難解「らむ」の現在推量と原因推量 2〉

では、実戦。2007年度のセンター試験の問題を見てみましょうか。

『センター試験 的中!!』の記事で述べていますが、センター試験の三日前の記事で、ドンピシャ!解説しています。詳細は『古文のツボ 其の七』をご覧ください。

で、和歌の評価は「当意即妙」で決まり、「臨機応変」じゃないよ、と述べていますが、ひっかけまで当たってしまいましたね。かなり和歌をめぐる本文を演習した人でないと、なかなか難しいでしょう。

でも、実は助動詞「らむ」でも二者択一にしぼれました。さて、「らむ」を「道具」として使いこなせた受験生は何人いたことでしょう?やってみますか。

 

【2007年度 センター試験 古文】

<本文>

初霜も置きあへぬものを白菊の早くもうつる色を見すらん

<設問>

問4 傍線部B「初霜も置きあへぬものを白菊の早くもうつる色を見らん」という和歌の説明として最も適当なものを、次の1~5のうちから一つ選べ。

 

1 兵部卿の宮に夢中になっている新婚の姫君に対して、「初霜もまだ降りないのに、どうして白菊は早くも別の色に染まっているのだろうか」と、ひやかして詠んだ。

2 宮仕えで気苦労が絶えないことを姫君に打ち明けたくて、「初霜もまだ降りないけれども、白菊は早くもよそに移りたがっているようだ」と、暗示するように詠んだ。

3 描いた白菊を姫君がすぐに塗りつぶしてしまったことに対して、「初霜もまだ降りないのに、どうして白菊は早くも色変わりしているのだろうか」と、当意即妙に詠んだ。

4 白菊を黒い色に塗り替えた姫君の工夫を理解して、「初霜もまだ降りないけれども、庭の白菊は早くも枯れそうな色に染まってしまったようだ」と、臨機応変に詠んだ。

5 色を塗り替えられた白菊から容色の衰えはじめた女性の姿を連想して、「初霜もまだ降りないのに、どうして白菊は早くも色あせたのだろうか」と、冗談半分に詠んだ。

 

和歌をよく見てください。「見す(見せる)」とあるから、白菊が「うつる(色あせる・色が変わる)」のは目の前の事実とわかりますね。よって原因推量なんです。

原因推量は必ず原因の表現とともに使われる、って、原因の表現がどこにもありません。だったら原因を問う疑問語「など」「なに」等の省略、補って解釈するのでしたね。

など白菊の早くもうつる色を見すらん

どうして白菊は早くも色変わりするようすを見せているのだろうか

こんな直訳でしょう。原因推量で訳しているのは「1」「3」のみ。二者択一にしぼれます。これが「道具」として文法を使うということなのです。で、解答は「3」でした。

【語釈】

・動詞+あふ…終わりまで・すっかり~しきる)

・うつる…色あせる・心変わりする(って、これも『古文のツボ』で予想していたっけ)

二者択一、後は文脈から正解、って、典型的なセンター試験の五者択一問題ですね。

 

1 は「新婚の姫君に対して、~ひやかして詠んだ。」が、文脈からするとまずいでしょう。「白菊が別の色にそまる」とは、姫君がまるで他の男から心変わりしたかのような比喩になってしまいます。

2・4 目で見て「~ようだ」というのは、視覚による推定「めり」です。後日説明しましょう。

5 「どうして~したのだろうか」は、過去の原因推量「けむ」でしょう。ちなみに、「けむ」の原因推量で悩む必要はマッタクありませんよ。普通に過去推量「~しただろう」でOK、訳してみれば結果的に原因の推量になってるだけですから。

 

以上、受験生、最後の最後は和歌の勝負、ってサンザン言っている意味がわかりますね?センター試験、早稲田、上智、和歌の勝負って、わかりますね?

和歌の「らむ」は「わからん」と肝に銘じておきましょう(オヤジ)。とはいえ、上記の解説のようなアプローチができた受験生はかなり優秀だと思いますよ。

いずれ、和歌に関する重要構文でもう一度解説しましょう。
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【2007/06/05 17:26】 | 古文の基礎 41-60 | トラックバック(0) | コメント(0)
大学入試 基礎講座 『古文の基礎』 其の五十九
「助動詞」 〈超難解「らむ」の現在推量と原因推量〉

文法全体の中ではいちばんメンドーなところ、上級者向けです。

古典文法初級者は読まなくてもいいです。というか、読まないほうがいい。今の段階では「む・らむ・けむ」を訳し分けられたらOK!文法全体がある程度見わたせて、「和歌ってこんな感じ」というのがつかめたら、最後に読むといいでしょう。

 

【「らむ」…現在推量/原因推量 1】★★

 

現在推量…目の前にない今現在の事実を推量する。(今ごろ~しているだろう

・主体→→→(目の前にない)→→→現在の事実(の推量)

 

例 (光源氏は)内裏(うち)を思しやりて「(殿上人の)名対面(なだいめん)は過ぎぬらむ

(光源氏は宮中をご想像なさって、「殿上人の名対面(夜の点呼)は今ごろすんでしまっているだろう。」)

※「思ひやる(尊敬)→思(おぼ)しやる」(想像なさる)という表現があるから、宮中での事実は眼前にない、現在推量とわかります。

 

原因推量 … 目の前に事実があって、眼前の事実の背景、原因となっているものを推量する。必ず原因を表す表現をともない、原因を表す表現と眼前の事実を表す表現とがセットになって表現される。原因と事実の表現を確認するのがポイント。

 

●原因を表す表現(「已然形+ば」「形容詞語幹+み」「~て(接続助詞)」等)をともなって

…<原因>ので、<事実>しているのだろう

●原因を問う疑問語(「など・なに」等)をともなって

どうして<原因を問う疑問><事実>しているのだろう

・主体→(目の前にある)→事実(の背景の推量)

 

※「形容詞語幹+み」で原因・理由をあらわす構文は『古文の基礎 其の十五』参照のこと。

※接続助詞「て」が原因・理由をあらわすのは、現在も同じです。「どうして遅刻したんだ?」「いや、電車が遅れ…」って言い訳しますよね。

 

例 いにしへを恋ふる涙の染むればや紅葉(もみぢ)の色もことに見ゆらむ

(恋人との昔を懐かしく思って流す涙が染めるので、紅葉の色もとりわけ美しく見えているのであろうか)

※「見ゆ」とあるので眼前の事実=原因推量とわかる。

・「いにしへを恋ふる涙の染むれば」…<下二段動詞「染む」已然形「染むれ」+「ば」=原因>

・「紅葉の色もことに見ゆ」…<事実>

 

例 など時鳥(ほととぎす)声絶えぬらむ

どうしてほととぎすの声が絶えてしまっているのだろうか。)

※「時鳥声絶えぬ」というのはその場における目(というか耳)の前の事実。原因推量とわかる。

「など」…<原因を問う疑問>

「時鳥声絶えぬ」…<事実>

 

※「~ので~しているのだろう」という原因の推量、原因がまったくわからなかったら「どうして」という原因を問う疑問にかわるだけです。

 

【上級篇】

和歌は「五七五七七」の定型詩。だからよく省略がおこります。

そのため、和歌で疑問語「など」「なに」等が省略されてしまう場合があります。その場合はこちらで「など」「なに」等、疑問語を補って原因推量で解釈しなくてはなりません。

 

例 ひさかたの光のどけき春の日にしづ心なく花の散るらむ

(光穏やかな春の日にどうして落ち着いた心もなく桜の花は散っているのだろう

※「ひさかたの」は枕詞、訳しません。

嵐の日ならともかく、光穏やかな春の日に、目の前にない遠くの場所で桜の花がバラバラ散っているだろうという現在の推量は成り立たないのではないでしょうか?

そうである以上、「しづ心(落ちついた心)なく花の散る」は眼前の事実としか考えられません。眼前の事実について「らむ」といっているのだから原因推量でしょう。でも、原因の表現がどこにもありません。だったら、原因を問う疑問語「など」「なに」等を自分で補って「などしづ心なく花の散るらむ」と原因推量で解釈します。

「など」…<原因を問う疑問>

「しづ心なく花の散る」…<事実>

 

以上、メンドーでしょ?

2007年度のセンター試験、和歌の説明問題で出ていますから、次回、解説していきましょう。





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【2007/06/04 16:22】 | 古文の基礎 41-60 | トラックバック(2) | コメント(0)
大学入試 基礎講座 『古文の基礎』 其の五十八
「助動詞」 〈む・らむ・けむ〉

助動詞「む」「らむ」「けむ」はセットにしておさえましょう。基本は簡単です。

次回、展開していきますが、「らむ」は本当に難しい助動詞です。原因推量がからむとメチャメチャ難しくなります。文法全体の中で一番難しいでしょう。ちなみに、今年のセンター試験で問題になっていましたが、おそらく気がついた人はごく少数でしょう。

だから、基本だけはしっかりおさえておきましょう。

 

【助動詞「む」「らむ」「けむ」の違い】

活用は「む」とまったく同じ。「らむ」は「ら」をくっつけるだけ。「けむ」は「け」をくっつけるだけ。

意味は、基本的には時制が違うだけです。「む」は未来推量、一般的な推量、「らむ」は今現在の推量、「けむ」は過去の推量。

  ・む  …推量(~だろう)

  ・らむ …現在推量(今ごろ~しているだろう)

  ・けむ …過去推量(~しただろう)

です。簡単でしょ?

婉曲の用法も同じです。婉曲は遠まわしに言う表現ですが、訳さなければ訳さなくてもいいヤツですので、どうでもいいと思います。

  ・む(連体形)+名詞 … 婉曲・仮定(~ような・~としたら、その~)

  ・らむ(連体形)+名詞 … 現在の婉曲・伝聞(~ているような・~ているという)

  ・けむ(連体形)+名詞 … 過去の婉曲・伝聞(~たという)

名詞はよく省略されたりしますが、悩む必要はまったくありませんよ。

 

例 この獅子(しし)の立ちやう、いとめづらし。深き故(ゆゑ)あら

  (この獅子の立ち方はとても珍しい。深いわけがあるのだろう。)

※ラ変動詞「あり」未然形「あら」に接続し、推量。

例 憶良(おくら)らは今はまからむ 子泣くらむ

  (わたくし、憶良はもう退出いたしましょう。今ごろ家では子供が泣いているだろう。)

※四段動詞「泣く」終止形に接続し、現在推量。ちなみに、「まからむ」は四段動詞「まかる」未然形「まから」に意志の「む」が接続したもの。接続をよく見ましょう。「まか」という終止形はありえません。

例 前(さき)の世にも御ちぎりや深かりけむ

  (前世でもご因縁が深かったのだろうか、)

※形容詞「深し」補助活用連用形「深かり」に接続し、過去推量。


 
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【2007/06/03 19:03】 | 古文の基礎 41-60 | トラックバック(0) | コメント(0)
大学入試 基礎講座 『古文の基礎』 其の五十七
「助動詞」 〈つ・ぬ〉

完了・強意の助動詞「つ」「ぬ」、何も難しくないです。あえて違いをいえば、「つ」は意志的な動作に用いられ、「ぬ」は自発的、自然発生的な動作に用いられます。

「つ」は下二段型、「ぬ」はナ変型、ていうか、ナ変とまったく同じです。

「つ」の未然形・連用形「て」、それと「ぬ」の連用形は接続パターンが決まっていますから覚えてしまいましょうか。

 

【「つ」の未然形・連用形「て」の接続パターン】

てむ  …「つ」未然形+推量の助動詞「む」

てけむ …「つ」連用形+過去推量の助動詞「けむ」

てき  …「つ」連用形+過去の助動詞「き」

てけり …「つ」連用形+過去の助動詞「けり」

てば  …「つ」未然形+接続助詞「ば」 仮定条件句を作る。

てまし …「つ」未然形+推量の助動詞「まし」

※「てむ・てけむ・てき・てけり・てば・てまし」なんて覚えてしまいましょう。接続パターンはこれだけ。「て」の識別でたまに聞かれますね。

 

【「ぬ」の連用形「に」の接続パターン】

にき  …「に」+過去の助動詞「き」

にけり …「に」+過去の助動詞「けり」

にけむ …「に」+過去推量の助動詞「けむ」

※「にき・にけり・にけむ」なんて覚えてしまいましょう。文法問題で超頻出、今年のセンター試験でも出した、「に」の識別でよく顔を出します。

「に」の識別は本当に難しい。でも難しいのは断定の助動詞「なり」と格助詞「に」「にて」です。完了の「に」なんか、ヘソで茶をわかしてくださいね。

と、いいつつも、早稲田大学レベルになるとソコをひっかけてきますから、難関大学を受験する人は接続、文脈等、よくよく注意してください。ウソだと思ったら『大学入試直前講座 『古文のドツボ』 其の一』を見てみましょう。

 

練習 次の傍線部の文法的説明として正しいものをそれぞれ選びなさい。

 ・秋風の吹きし日より音羽山(おとはやま)峰のこずゑも色づきけり

   イ 断定の助動詞「なり」   ロ 完了の助動詞「ぬ」

   ハ 格助詞「に」        ニ 接続助詞「に」

 

解答 前=ロ 後=ロ

口語訳 秋風が吹いた日から音羽山では峰の梢(こずえ)も紅葉したことだなあ。

解説 「にき」「にけり」の「に」は完了、とはいえ、下にくる語が活用語なら活用しますからね。「にし」の「し」は過去の「き」の連体形です。

 

練習 次の和歌の口語訳としてふさわしいものを選べ。

 ・梅が香(か)を袖に移してとどめてば春は過ぐとも形見ならまし

  イ 梅の香りを袖に移してとどめたので、春が過ぎ去っても思い出の種となるだろうに

  ロ 梅の香りを袖に移してとどめたので、春が過ぎ去っても思い出の種となってほしい

  ハ 梅の香りを袖に移してとどめたなら、春が過ぎ去っても思い出の種となってほしい

  ニ 梅の香りを袖に移してとどめたなら、春が過ぎ去っても思い出の種となるだろうに

 

解答 ニ

解説 「つ」の未然形+接続助詞「ば」、「未然形+ば」は仮定条件、仮定条件句をともなった「まし」はすべて反実仮想でしたね。反実仮想は詠嘆的表現だから和歌でよく使われるって言いましたね。ほらね、って問題です。忘れた人は『古文の基礎 其の五十二』参照のこと。





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【2007/06/02 16:35】 | 古文の基礎 41-60 | トラックバック(1) | コメント(0)
大学入試 基礎講座 『古文の基礎』 其の五十六
「助動詞」 〈まほし・たし〉

希望・願望の表現は助動詞、助詞にかかわらず、本当によく出ますね。「まほし」「たし」ともに形容詞と活用はまったく同じ(ただし命令形はなし)。

「まほし」は未然形接続で、平安時代に使われ、「たし」は連用形接続で、中世から使われました。使われた時代がちがうんですね。

 

【「まほし」「たし」の意味】★

・自己の希望  ~したい

・他に対する希望  ~してほしい

 

例 いかなる人なりけん、尋ね聞かまほし

  (どのような人であったのだろうか、尋ねて聞きたい。)

※四段動詞「聞く」未然形「聞か」に接続。

例 花といはば、かくこそ匂はまほしけれ

  (花というならば、このように匂ってほしい。)

   ※四段動詞「匂ふ」未然形「匂は」に接続。

 

例 父のおはしまさん所へぞ参りたき

  (父がいらっしゃる所へ参上したい。)

   ※四段動詞「参る」連用形「参り」に接続。

例 家にありたき木は松、桜。

  (家にあってほしい木は松と桜だ。)

   ※ラ変動詞「あり」連用形「あり」に接続。

 

以上、短文だけでは何とも言えませんが、「自己の希望」なのか、「他に対する希望」なのか、文脈をよく見て訳し分けてください。そのためにもガンガン演習量をかせがないと、ですね。

ちなみに、「まほし」は形容詞シク活用型です。シク活用形容詞すべてに言えることですが、過去の助動詞「けり」と間違えないようにしてください。上記の例文なら、係助詞「こそ」を受けて、已然形「まほしけれ」で一語です。「まほし」と「けれ」を分けてはいけません。って、接続を考えればわかりますね?たま~に品詞分解の問題になります。

一応、復習しておきましょうか?形容詞型の助動詞って、あつかいは形容詞と同じです(「ごとし」はのぞく)。形容詞、下に助動詞がくるときは補助活用を使うんでしたね。だから、もし、助動詞「けり」に接続するなら、補助活用連用形で接続し、「こそ~まほしかりけれ」となるはずです。

希望の表現は記述の王様、配点が高いですよ。点差をひろげるチャンス!


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【2007/06/01 17:33】 | 古文の基礎 41-60 | トラックバック(2) | コメント(0)
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谷村 長敬(たにむら ちょうけい)

Author:谷村 長敬(たにむら ちょうけい)
1965年生まれ。立教大学大学院修士課程修了。在学中、赤坂憲雄先生に師事。院生による共著に『「注文の多い料理店」考』。お茶の水ゼミナールで国語全般担当。テキスト(現代文・古文)、小テスト(年間3000点分)の作成にたずさわる。2006年、「ワークショップ フットプリンツ」創業。現代文と小論文を並行して演習する講座をはじめる。趣味はスキー。

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