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大学入試 基礎講座 『古文の基礎』 其の五十
「助動詞」 〈「む」のいろいろな意味〉

さあ、おいしいところに入っていきます。助動詞「む」のいろいろなバリエーションの訳、本当によく出ますよ。記述で出すと、かなり難しいでしょう。だいたい選択肢問題です。

短文で理解して丸暗記しても、おそらく使いものにならないでしょう。どれもこれも文脈の中で訳していく表現ですからね。受験生、最後の最後は演習量の勝負!と、「古文のツボ」で試験直前の受験生に訴えてきましたが、以下の内容を見ればその理由がわかるはずです。いずれも悩ましいヤツらですが、だからこそガンガン文脈を読んで悩んでいきましょう。

 

【「こそ~め」適当】★★★

会話文、手紙文(つまり、顔見知りの関係)、相手に何か勧(すす)めているような文脈、相手(聞き手・読み手)の動作について使われていたら「こそ(係助詞)~め(「む」已然形)」は適当(~のがよい・~しないか・~したらどうだ)で訳しましょう。

 

(会話文・手紙文)

「~こそ (相手の動作) 

      =適当(~のがよい・~しないか・~したらどうだ

 

例 (光源氏が病気になって、ある人がすぐれた優れた修験者を紹介する文脈)

「とくこそ試みさせ給は

(はやくお試しなさるのがよい。)

※会話文で、相手の動作(「試みる」)について「こそ~め」と用いられていることを確認しましょう。場合によっては当然(~はずだ)で訳した方がいい場合もあります。

 

※「こそ~め」は必ず適当で訳せ、ということではありません。ほとんどの「こそ~め」はただの推量・意志でしょう。あくまで文脈の中で訳していく表現です。

ただし、わざわざ傍線部訳が求められ、「こそ~め」とあったら適当を疑ってみたほうがよいでしょう。大学受験生、戦略的にものごとを考えねば、ですね。

 

【「連用形+てむ・なむ」強い推量・強い意志・可能推量・適当】★★★★★ 

強意の助動詞「つ」「ぬ」で、「む」を強めた表現。助動詞「む」をさらに強めた助動詞に「べし」があります。つまり、「連用形+てむ・なむ」って、助動詞「べし」と似たような意味になるんですね。

 

連用形 + (「つ」未然形)+   

        (「ぬ」未然形)

         

    1.強い推量(きっと~だろう・~にちがいない

    2.強い意志(きっと~しよう・~してしまおう

    3.可能推量(~できるだろう

    4.適当(~するのがよい)場合によっては当然(~べきだ

      ※「連用形+てむ・なむ」=「べし」とおさえるとよいでしょう。

 

例 1.髪もいみじく長くなりなむ

(髪もきっとたいそう長くなるだろう。)

 ※四段「成る」連用形に接続。

  2.御船返してむ

(船をもどしてしまおう。)

 ※四段「返す」連用形に接続。

  3.飛び降るとも降りなむ

(飛び降りても降りることができるだろう。)

 ※上二段「降る」連用形に接続。

  4.心づきなきことあらむ折は、なかなかそのよしをも言ひてむ

(気にくわないことがある時は、かえってそのわけを言うのがよい。)

 ※四段「言ふ」連用形に接続。

※難しいのは例3.「降(お)る」のように、未然連用同形の形に接続した場合です。上一段、下一段、上二段、下二段は未然連用同形です。

  ・未然形+「なむ」=他に対する希望を表す終助詞「なむ」(~してほしい)

  ・連用形+「なむ」=助動詞「ぬ」未然形「な」+助動詞「む」

こうなったら文脈から判断するしかありません。実戦ではほんとうによく問われるところです。後々、「『なむ』の識別」のところで徹底的に解説していきます。

 

【「連用形+てむや・なむや」勧誘・反語】★★★

 

連用形+(「つ」未然形)+(推量・終止形)+(終助詞)

(「ぬ」未然形)   

=1.勧誘(~してくれないか・~したらどうだ・~しないか

2.反語(~だろうか、いや~ない・~できようか、いや、できない

 

・会話文、手紙文で人に何かお願い、あるいは勧めている文脈で、相手(聞き手・読み手)の動作について使われていたら勧誘で訳しましょう。判断基準は上記の「こそ~め」の適当と同じです。

 

例1.「御弟子にせさせ給ひなむや

(〈あなたの〉お弟子にして下さらないか。)

※「弟子にする」のは相手(聞き手)の動作。

 

・反語で訳す場合もよくあります。会話文、手紙文だったら勧誘・反語どちらともいえませんが、地の文で使われていたら、おそらく反語でしょう。だって、作者が読者に「~してくれないか」というのはありえませんからね。

 

例2. いかならむ世にも、かばかりあせはてむとはおぼしてむや

(どんな世でも、これほど荒廃してしまおうとはお思いになったであろうか、

                        いやお思いにならなかったろう。)

 

以上、どれでも臨機応変、文脈に応じて自由に訳せるようにしておきましょう。勝負の決め手は「場数」です。
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【2007/05/25 16:25】 | 古文の基礎 41-60 | トラックバック(1) | コメント(0)
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プロフィール

谷村 長敬(たにむら ちょうけい)

Author:谷村 長敬(たにむら ちょうけい)
1965年生まれ。立教大学大学院修士課程修了。在学中、赤坂憲雄先生に師事。院生による共著に『「注文の多い料理店」考』。お茶の水ゼミナールで国語全般担当。テキスト(現代文・古文)、小テスト(年間3000点分)の作成にたずさわる。2006年、「ワークショップ フットプリンツ」創業。現代文と小論文を並行して演習する講座をはじめる。趣味はスキー。

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