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大学入試 基礎講座 『古文の基礎』 其の七十四
「識別」 〈三大識別「なり」「なむ」「に」〉

さて、文法の総仕上げ。三大識別「なり」「なむ」「に」をやっていきます。これらをクリアすれば、文法は卒業、あとはガンガン演習をこなすのみ、やればやるほど雪ダルマ式に実力がついていきます。

 

【「なり」の識別】★★★★★

 

伝聞・推定の助動詞「なり」…終止形(ラ変には連体形)に接続

伝聞(~そうだ・~という)…うわさの文脈で用いられていたら伝聞。

推定(~ようだ)…音、声のする文脈で用いられていたら推定。


 

断定の助動詞「なり」…体言・連体形に接続

断定(~である)

※「場所なる名詞」の形をとったら存在(~にある)

 

3ナリ活用形容動詞

 

4ラ行四段動詞「成る」

 

基本は、接続をしっかり確認することです。

 

例1 をとこもすなる日記といふものを、(男の人も書くという日記というものを、)

…伝聞の助動詞「なり」連体形。サ変動詞「す」終止形に接続している。

例2 をんなもしてみむとてするなり。(女も書いてみようと思って書くのである。)

…断定の助動詞「なり」終止形。サ変動詞「す」連体形「する」に接続している。

 

注Ⅰ・終止形と連体形が同じ活用語(四段活用・上一段活用など)に接続する場合、および、ラ変(型)活用語の連体形に接続する場合(伝聞・推定の「なり」は終止形接続の助動詞だからラ変(型)には連体形に接続)は接続から判断できません。その場合は、文脈をもとにして判断します。

(a)うわさの文脈だったら伝聞。

(b)音、声のする文脈だったら推定。

(c)それ以外は断定と考える。

 

例(a)「奥山に猫またといふものありて、人をくらふなる」と人のいひけるに、

(「山奥に猫またというものがいて、人をとって食うそうだよ」と人が言ったところ、)

※「くらふ」は四段活用で終止・連体同形、接続からはわかりません。話題が山奥の化け物の話だし、まわりの人が言っているところから、うわさの文脈と考え伝聞と判断します。

 

例(b)山のたぎつ瀬音まさるなり

(山の急流の音がいっそう激しくなるようだ。)

※「まさる」は四段活用で終止・連体同形、接続からはわかりません。文脈に「音」とあるから(聴覚による)推定と判断します。ココ、いちばんつっこまれるところです。「音・声→推定」要チェックですよ。

 

注Ⅱ・ただし、次の場合は確定します。


(a)「鳴くなり」「衣(ころも)打つなり」の「なり」は推定。

(b)「撥音便(無表記)+なり」は伝聞・推定。

 

例(a)鴨ぞ鳴くなる 山かげにして

(カモが鳴くようだ。山陰で)

※「鳴く」は四段活用で終止・連体同形、接続からはわかりません。「鳴く」ということはそもそも音、声がしているわけだから(聴覚による)推定と判断できます。

「鳴くなり」「衣打つなり(冬の着物を出してトントンたたく)」とも『新古今和歌集』などで、多用された表現です。ということは、中世歌論などで論じられたりして…。早稲田大学、上智大学など、いかにも出題しそうなところです。

 

例(b)駿河の国にあなる

(駿河の国にあるという山)

※「あるなる」の形だったら「ある」はラ変の連体形だから、断定「なり」も伝聞・推定「なり」も接続できます。しかし、ラ変(型活用語)の撥音便(無表記)というのは、すでに見てきたとおり、推定「なり・めり」の上でおこるものなので、撥音便の下に「なり」とあったら、伝聞・推定の助動詞とわかります。伝聞か推定かは文脈しだいです。


・「あるなり」…文脈から断定か伝聞・推定か判断。

・「あ(ん)なり」…伝聞・推定に確定。


以上、撥音便の無表記パターンをおさえるのがいかに重要か、これでわかりますね。「なり」の識別に決定的にかかわるからです。「撥音便+なり=伝聞・推定」って、文法全体を通じていちばん出るところですが、撥音便を読めないことにははじまりません。

【推定「なり」「めり」にともなう撥音便】→大学入試 基礎講座 『古文の基礎』 其の六十二

 

注Ⅲ・形容詞(型)の活用語に接続する場合。


(a)断定は本活用の連体形に接続し「~きなり」の形をとる。

(b)伝聞・推定の助動詞は補助活用の連体形に接続し「~かるなり」の形をとる。


ただし、形容詞(型)の補助活用はラ変に活用するため、撥音便を起こし、「~かんなり」、さらに無表記となって「~かなり」の形をとる場合もあります。

撥音便をおこさず「~かるなり」の形でも、形容詞(型)補助活用の連体形に接続しているので伝聞・推定と判断できるし、撥音便をおこして「~か(ん)なり」となっても先の注Ⅱ(b)から伝聞・推定と判断できます。

 

例(a)艮(うしとら)の方より吹き侍れば、この御前はのどけきなり

(北東の方角から風が吹きますので、こちらの御前は穏やかなの。)

※ク活用形容詞「のどけし」本活用連体形「のどけき」に接続しているので、断定。

ちなみに、これは、形容詞の本活用に助動詞が接続する唯一の例外です(ふつう、助動詞は補助活用に接続します)。


 

例(b)安らかに身をふるまふことも、いと罪重かなり

(気楽にふるまうのもたいそう罪が重いということだ。)

※ク活用形容詞「重し」補助活用の連体形「重かる」が、ラ変型活用語であるため撥音便をおこして無表記になっています。「撥音便+なり」から伝聞・推定と判断できます。

撥音便をおこさず「重かるなり」の形でも、補助活用の連体形に接続していることから、断定ではない、伝聞・推定と判断できます。こまかいですが、ココまでおさえておけば、あとは何をどうきかれても対応できるはずです。

 

例3 蚊やり火ふすぶるもあはれなり

(蚊遣り火がくすぶっているのもしみじみと趣き深い。)

※ナリ活用形容動詞「あはれなり」の活用語尾です。「~なり」で言いきって、様子、状態を表現していたら形容動詞です。

主な形容動詞は重要単語としておさえているはずですから、文法的にアプローチしなくてもだいたい形容動詞とわかるはずです。

ちなみに「~なり」の形は形容動詞ですよ。「げ」ってきたら形容動詞とおさえましょう。「きよげなり」「うつくしげなり」など。

 

例4 子となり給ふべきひとなめり。

(私の子お成りになるはずの人であるようだ。)

※四段動詞「成る」連用形。「なめり」の「な」は断定「なり」連体形「なる」の撥音便の無表記です。

四段動詞「成る」は、だいたい「~に成る」「~と成る」の形をとります。他に「生(な)る」(=実る)、「慣る」(=慣れる)、「鳴る」等の動詞が考えられますが、いずれにしろ文脈上、なにか動作を表現しているはずです。
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【2007/06/20 13:53】 | 古文の基礎 61-80 | トラックバック(0) | コメント(0)
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プロフィール

谷村 長敬(たにむら ちょうけい)

Author:谷村 長敬(たにむら ちょうけい)
1965年生まれ。立教大学大学院修士課程修了。在学中、赤坂憲雄先生に師事。院生による共著に『「注文の多い料理店」考』。お茶の水ゼミナールで国語全般担当。テキスト(現代文・古文)、小テスト(年間3000点分)の作成にたずさわる。2006年、「ワークショップ フットプリンツ」創業。現代文と小論文を並行して演習する講座をはじめる。趣味はスキー。

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