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大学入試直前講座 『古文のツボ』 其の十五
「文学史2」   〈平安日記の作品世界をおさえよう〉
 
  源氏と枕がちょうど一〇〇〇年、日記の成立順序をおさえたら、いよいよ作品世界をおさえましょう。作者名は必ず漢字で書けるようにしておくこと。
作品世界をおさえていると、出題されたときにメチャメチャ有利になります。『蜻蛉日記』『和泉式部日記』『讃岐典侍日記』など、圧倒的に有利になります。というか、難関大学はあらかじめ作品世界をおさえていることを前提にして出題してきますよ。
それぞれの作品で何が問われるのか、解説していきましょう。
 
 
作者・作品世界
 
『土佐日記』…紀貫之
※『古今和歌集』の中心的撰者・『古今集』の序文「仮名序(かなじょ)」執筆。
〈評価〉
最古の日記文学。もっぱら女性が用いていた、「ひらがな=女手(おんなで)」で日記を書くにあたり、女性に仮託(かたく…仮に女性の立場に身を置く)して客観的視点から自身の経験を書いていきます。自分のことなのに、他人事のように書いていきます。
〈内容〉
土佐の国司(今の県知事)の任を終え、船で都まで帰ってくる間のことを記した旅日記。土佐の国で亡くした娘をしのぶ旅でもあった。
※文学史にからめて、『古今和歌集』や「仮名序」をつっこんでもいいですね。土佐で亡くした娘をしのびつつ、和歌を詠む、という展開はおさえておいた方がよいですよ。でも、他人事のように書いていますからね。
 
『蜻蛉(かげろう)日記』…藤原道綱母(みちつなのはは)・藤原倫寧女(ともやすのむすめ)
※夫は藤原兼家(かねいえ)、姪(めい)は菅原孝標女(たかすえのむすめ)。
〈評価〉
最初の女流日記文学。ひたすら自己の内面を見つめる自照(じしょう…自己の内面を観察する)文学。
〈内容〉
夫、兼家の浮気に苦悩する女心、息子、道綱に対する母性愛がつづられる。
※必ずといっていいぐらい、人物関係が問われます。
・「浮気な人」「あてにならない人」「薄情な人」「来ない、あるいは来てもすぐ帰ってしまう人」=夫、兼家。
・「かわいい人」「見捨てておけない人」「幼い人」=息子、道綱。
 
『枕草子』…清少納言
※父は歌人で『後撰和歌集』撰者・清原元輔(もとすけ)。※一条帝の中宮・定子(ていし)に女房として出仕。
〈評価〉
最古の随筆文学。客観的・即興的・知的なおもしろさである「をかし」の文学と評される。
〈内容〉
多岐にわたります。一条帝の中宮定子のサロンでの出来事を中心に、一条帝・定子を絶大に賛美しています。学者の家系ということもあり、女だてらに(男=漢字の知識/女=かなの知識、という時代的背景があった)漢詩・漢文の知識を披露する箇所も見られます。
※清少納言を文学史でつっこむ時は、父、元輔が問われます。『後撰集』って、何番目の勅撰和歌集か言えますか?
 
『和泉式部(いづみしきぶ)日記』…和泉式部
※平安時代を代表する女流歌人。一条帝の中宮・彰子に女房として出仕。恋多き女性として有名。
〈評価〉
日記とはいうものの一人称体ではなく、三人称体で書かれているため、主語を「私は」ではなく「女は」と読んでいきます。日記というより、歌物語として読んでいった方がよいですね。
〈内容〉
恋人の為尊(ためたか)親王(兄)の死後、悲嘆にくれる女に敦道(あつみち)親王(弟)が言い寄ってくる。ゆれる女心。和歌の贈答。やがて二人は結ばれてゆく。情熱的ラブストーリー。
※超頻出。で、本文のほとんどが和歌、なんて、いかにも早稲田大学が好きそうでしょ?だから、和歌の贈答、「和歌は二つでワンセット」って読みを練習しておかないと、パニックになることまちがいなし。和歌の修辞をつっこんでもよいし、解釈を求めてもよいし、本文全体の要約をさせてもよいし、出題者の立場に立つと、ツッコミどころ満載です。だから、出る!当然、文学史を突っ込んだってよいわけです。彼女と同時代人、何人言えるかな?悩んだら前回の記事を見てください。 
『紫式部日記』…紫式部
※『源氏物語』作者。一条帝の中宮・彰子(しょうし)に女房として出仕。
〈内容〉
前半は中宮・彰子のサロンを中心に宮中の生活をつづる。後半は消息文(しょうそこぶみ)とよばれるもので、和泉式部・赤染衛門(あかぞめえもん)・清少納言など、ライバルの女房たちの人物批評を展開しています。特にも清少納言については、「女のくせに漢学の教養をひけらかす高慢な女だ」と、手厳しく批判を加えています。中宮定子⇔中宮彰子と、サロンも違うし、仲が悪かったんですね。
 
『更級日記』…菅原孝標女(たかすえのむすめ)
〈内容〉
少女時代から老境に至るまでの半生を回想してつづった自叙伝。少女時代を地方ですごし、『源氏物語』の世界にあこがれていた事などが書かれています。
・少女時代…物語世界にあこがれ、自分も将来は物語の女性たちのようになるのよ、と夢見がちなオトメ。
・成人…宮仕えに出てもつとまらない、父は出世できずに嘆いてばかり、と、一つ一つ大人社会の現実を知るたびに、少女時代の夢は破れていきます。
・晩年…一心に仏におすがりして、周りの反対をおし切って、お寺にこもったりして。
と、半生をふりかえった自叙伝です。
 
『讃岐典侍(さぬきのすけ)日記』…藤原長子(ちょうし)
〈内容〉
前半は典侍(ないしのすけ)として仕えた(実は愛人でした)堀河天皇の発病から病没するまでの看護の様子を描きます。後半は幼帝・鳥羽天皇の即位にともない再び出仕し、幼帝の世話をしながら折に触れて亡き堀河帝をしのぶという内容です。
※前半は、とにかく病気表現がつっこまれます。
後半は人物関係が問われます。帝が二人出てくるので、最高敬語だけでは簡単に判断できません。
・思い出モード…主語=堀河天皇
・現実モード…主語=鳥羽天皇
と、思い出の世界か、現実の世界か、で主語を見分けなくてはなりません。練習しておかないと難しいですよ。
 
『古今和歌集』『後撰和歌集』については以下を参照。
 
 
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【2008/01/30 16:12】 | 古文のツボ | トラックバック(0) | コメント(0)
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プロフィール

谷村 長敬(たにむら ちょうけい)

Author:谷村 長敬(たにむら ちょうけい)
1965年生まれ。立教大学大学院修士課程修了。在学中、赤坂憲雄先生に師事。院生による共著に『「注文の多い料理店」考』。お茶の水ゼミナールで国語全般担当。テキスト(現代文・古文)、小テスト(年間3000点分)の作成にたずさわる。2006年、「ワークショップ フットプリンツ」創業。現代文と小論文を並行して演習する講座をはじめる。趣味はスキー。

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