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センター国語徹底研究!! 其の十二
〈 漢文・2007年・追試験 〉

目指せ! センター国語9割!!

今回は、「多項」というわけではありませんが、「人間」と「虎狼」「鶏鴨」といった動物との類推関係は、いつもと同じ。
なかなかの良問。

問1.
(1)
「生けるものを殺さず」が「一(いつ)の」と強調されている。
「人様のものはビタ一文、とっちゃいけねえ!」とか、
「一滴も涙をこぼさなかった」とか。
つまりは、「強い否定」でしょ?

(2)
シブイな!
「親(みづか)ラ」は「主な副詞」として暗記するほどではないけれど、漢文ではよく出てくるので、読めてほしい。
けれど、読めなくても答えられるように設問が作ってあります。
漢文の論理(ロジック)が「類推思考(アナロジー)」だということを常に念頭におくべし。

文忠公…注2「政争により入獄していた」
||
己親経患難
||類推
鶏鴨之在庖廚


つまり、「経患難=庖廚の鶏鴨」とは、「自分自身」なのです。
ちなみに、
「己の」と連体修飾うけている、「経る」と動詞の上にあるから、主語、だから体言(名詞)、「両親が」といきたくなる気持ちは重々、わかります。判断根拠としては正しい。
ですが、「親=両親」だったら、そもそも傍線引くか?設問にするか?という素朴な疑問は持つべきでしょうね。文脈上、「両親の存在」なんて一箇所もないですしね。
シンプルだけど難しい、って早稲田大学が好きな問い方です。

問2.
主な副詞はおさえるべし。
(ア)(イ)で答えは決まりますね。

ちなみに、
「且」はほんとうによく出る「多義字」
→→→ 漢文のツボ 其の四
「まさに~(んと)す」が穴場なのです。白文読みで出るよ!
傍線部よ~く見て!返り点打ってないでしょ?再読文字なら返り点があるはず、返り点がないから副詞「かつ」とね。って、選択肢あるからバレバレですが、このような読み方ができるといいですね。
「已」って、「已然形」の「已」じゃないですか。
未然…再読文字ですよ。「いまだしからず」
已然…副詞で「すでにしかり」

問3.
「豈に~んや」は反語にキマリ。
でもそれを聞かないで、「理由」を問うところがシブイ!
「百計以取之」は注釈をつけてもよいところ。「注釈がわりの設問」ってやつです。
このテの設問は、「表現としてのブラックボックス」ですから、選択法では答えが出てこない、消去法です。
1.「あらゆる種類の穀物」がダメ。
2.「主食」がダメ。
3.「虎や狼さえも、食べる」がダメ。
4.「罪悪感をいだきながら」がダメ。
と、バツを明確にしてくれていますよ。
で、結果として
「百計=あれこれ工夫」
「之=穀物以外のさまざまなもの」
という注釈が得られるわけです。
典型的な、早稲田大学の選択肢の作り方ですよ。

問4.

傍線部「おほはるれば」という条件句、「已然形+バ」は、漢文では仮定条件「~ならば」、確定条件「~ので」と、どちらも表現します。
でも、選択肢がすべて「~から」と原因理由の表現になっていますね。
で、何の原因理由を考察しているのか?
傍線直前「恬不為怪」の理由となりうるものはどれか、と設問を読み換えていきましょう。
「恬(平気)」でいられるのは、自覚がないから、3「気づかないから」なのです。
1.「定着」が「蔽はる」の訳として不適。
2.「学習」「教え込まれる」が文脈上おかしい。
4.「訓練」「身につける」が文脈上おかしい。
5.がビミョー。文末に「未能断肉」とありますからね。
そうすると、1・3・5あたりで迷うかな。
決めるのは「蔽はる」の解釈でしょう。適当な漢字熟語がないのですが、「啓蒙」なんて思い浮かぶとよいですね。
「啓蒙」=蒙(くら)きを啓(ひら)く…無知なものに知恵をあたえて明るくすること。
「おおわれる=暗い=無知」で、「気づかない」と言い換えてみる。
あるいは、本文2行目、「人~必食肉」と言っていますから、肉食が「あたりまえのこと」、すなわち「習慣」になっている、というアプローチもいいでしょうね。「一部地域の習俗」や「一個人の習癖」はおかしい。


ビミョーな問いですね。まずは消去法。
2.「穀物」に限定はされない。「死せる物のみを食ふ」と限定しているだけ。
4.「獄中での長く質素な生活に慣れたので」の原因理由は言っていない。
5.「他の人から頼まれた」かどうか、文脈ではいっさい触れていない。
で、1・3の二者択一。
1.「何かよい報いを得よう」が蛇足っぽい。
3.「とらわれの身から解放されただけで十分ありがたく」が蛇足っぽい。
さて、どうする?
困ったときには、常に文脈全体を見わたす視点にシフト!

常に全体を見わたして、部分へ!!

フットプリンツの基本コンセプト。これは現代文、小論文に限らず、古文、漢文、読解系すべてにおいて有効な「視点」なのです。
ポイントは、傍線部直下の「因りて」。「不宰殺一生」の原因理由を述べている会話文だ、という点です。
かすかながら、問2(ウ)、問5とリンクしています。
「不宰殺一生」の理由、自らの「考え」「心算(つもり)」を述べているのは、
1.「生き物を殺さないことによって、~というつもりではない。」
です。
3.は「不宰殺一生」の直接的理由ではない。し、細かいことをつっこめば、「もう他には何も望まない」が極論すぎ。「死せる物のみ」は食べていました。
ちなみに、「極論」というヒッカケ。現代文でよく使われる手法ですが、ヒッカケを消去する道具として、漢文でも使えるでしょ?ぜひ、そなえておきたい「道具」です。

問5.
ハイ、出ました。またまた使役。
「返り点付き、おくりがななし」の訓読。最近よく出されるカタチ。まったくの白文とちがって「返り点」は打ってくれていますから、少々長め、難しめになる傾向があります。まずは、着目するべき「字」を決める。
今回は、
「不復」「以」「使」「耳」これらを洗い出せば、選択肢はだいたい消去できるはずです。

・「不復」
赤本の解説しかり、学校の先生も、これを「部分否定」って解説していないかな?
「不復」…部分否定(二度と~しない)一回目はやったけど、二回目はやらない。
「復不」…全部否定(今度もまた~しない)一回目も二回目もやらない。
って、ホントかな?
きわめて、日本的な漢文のにおいがします。
添削担当者が漢文を教えてきた限りでは、これは「部分否定」ではない、「強い否定」(決して~ない)と考えるべきだと思いますよ。
「オマエとは二度と口きかないっ!」
って、「一回目はきいたけど、二回目はきかない」ってことを言っているわけじゃないでしょ?「オマエとはゼッタイ口きかない」って、「強い否定」なのでは?
「復不」のカタチって、実際、漢文読んでいて、出てこないんじゃないですか?

・「以」で選択肢、消せますか?
→→→ 漢文のツボ 其の三

「以+名詞+動詞」…名詞ヲ  以テ 動詞
返読文字、「以」は必ず「ヲ以テ」のカタチで返ってきて、「動詞」。動詞の位置に着目してください。かなり、特殊でしょ。だから白文読みの大きなヒントになります。

「以+名詞(動詞なし)…名詞ヲ以テス
「以」のサ変化、「名詞ヲ以テ」と返ってきて、「動詞なし」、だったらサ変化して「以テス」と動詞で読んでやる。

「~以~」(返り点なし)…ただ「以テ」と読むだけ。
単純接続(そして、それから)、あるいはただ語調を整えるだけ。特に意味はない。

以上、「以」は方法手段とか、原因理由とか、いろいろな意味をあらわします。重要というわけではないのですが、漢文でしょっちゅう使われる。だから、白文読みのなかにチョロっと入ってきます。ドンピシャ!正解!という大ネタではなく、選択肢を消す小ネタとして広く使えます。だから、おさえておく。

「以テ」は返らない、「ヲ以テ」は返る!

と、おさえておきましょう。「返読文字」がなぜ重要か、「返読文字」は「よみ」だけおさえても使えない、「返り方」をおさえないと、って、「白文よみ」やってみればわかるはずです。
傍線部、よ~く見て。

「以+口腹之故+致」=「以+名詞+動詞」=名詞ヲ以テ動詞

のカタチです。
「、」(句点)が余計な気もしますが、
1・4「以てするも」はサ変化して読んでいますね。百歩ゆずってサ変で読むとしても「以テシテ、」と、単純接続ではないかな?「モ」の逆接はおかしい。

・「使」
毎年のように出ていますな。
→→→ 漢文のツボ 其の八

使役=「主語+使+名詞(使役対象)+動詞」
   …主語 名詞(使役対象)ヲシテ 動詞(未然形)シム

「使」の字が白文にあったら、まっ先に使役対象を探す。だいたい、人物がくるからわかりやすい。次に動詞を探す。動詞の位置が特殊でしょ?だから「読みやすい」のです。それが「特殊」とわからない人は、「文型」からやらなくてはいけませんよ。

使役の白文よみのポイント

「使」があったら、使役対象探せ!動詞探せ!

で、使役対象はかならず「ヲシテ」とおくる。
ちなみに、「セシム」と覚えている人がいますが、それはまちがい。漢文はサ変動詞が多いため、よく「セ(サ変未然形)シム」のカタチをとるだけのこと。国立二次の記述とかでひっかかりますよ。「セシム」という助動詞は存在しません。使役の助動詞「シム」、だから、動詞の未然形に接続するだけです。「受く」は下二段、だから「受ケ(下二段未然形)シム」。

・「耳」
お約束の限定の助字。「~のみ」(~だけ)と限定します。
記述になって、平気で「みみ」って書いてくる受験生がいますが…。
文中で使われて、限定、
文末で使われて、強い断定(必ず~するのだ!)
という感じでよく使われます。
強調の表現でしょ?文脈で使われる箇所は?
そう、本文末、

漢文・中世説話の話型

・事件、出来事 → 教訓、主張

今回も「文忠公」の事例を引き合いにだして、お説教してますよね。
以上、これらを洗い出せば、選択肢はどんどん消えます。

返読文字の返り方おさえるべし!

くれぐれも肝に銘じてください。

問6.
六者択二でバツの選択肢を明確にしておく。早稲田大学の選択肢の作り方です。
「人のアゲアシをとる」のって、カンタンじゃないですか?だから、ここまで文脈をしっかり把握してきて選択法、もあり。文脈がよくわからん、設問がわからん、だったらさっさと問6やって消去法。ここで「全体像を把握」というテもありですよ。
1.「鶏や鴨などにしておくのがよい」がダメ。「不宰殺一生」です。
3.「反省して身を清めるため」がデタラメ。
5.「鶏や鴨などと同じ生き物だから、」という理由は述べていない。蛇足です。
6.「共生」がデタラメ。
と、消去できれば、
2.本文末と対応。
4.傍線部Dとその前文と対応。
ホラ、そうすれば、
4「蘇文忠公はかつて投獄されて死の恐怖を経験したことがある」、自身の経験を述べているということがわかります。問1(2)「両親」ではない。
4「ので」と「生き物を殺さない」原因理由を言ってます。で、問2(ウ)「よりて」とリンクしていきます。
4の内容は文忠公が生き物を殺さない理由を要約したもの、つまりは、問5の要約でもあるわけです。

解答順序…常に二つの方向性をもつべし!

・問1→問2→問3→→→問6(選択法)

・問6(消去法)→問1(2)→問2(ウ)→問5


とね。
どちらでもよいでしょうが、共通して言えることは、「部分で立ち止まらない」ということです。時間のムダ!

センター試験=目指せ!問6!

と、口をすっぱくして言っている意味がわかりますね?
ちなみに、「漢文の要約用語」に気がつきましたか?
漢文の論理(ロジック)は「類推(アナロジー)」って言ってきましたね。

己親経患難
||類推
鶏鴨之在庖廚


と、文忠公が「自らの」体験を「鶏鴨」になぞらえた、「置き換え」たのです。
それを要約して、4「同様」と言ってますね。
「アッ、類推思考が働いてる!」
って気がついてくれると、拙ブログで解説してきた甲斐があるのですが…いかが?

それでは、次回は「漢文・2006年・本試験」です。

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プロフィール

谷村 長敬(たにむら ちょうけい)

Author:谷村 長敬(たにむら ちょうけい)
1965年生まれ。立教大学大学院修士課程修了。在学中、赤坂憲雄先生に師事。院生による共著に『「注文の多い料理店」考』。お茶の水ゼミナールで国語全般担当。テキスト(現代文・古文)、小テスト(年間3000点分)の作成にたずさわる。2006年、「ワークショップ フットプリンツ」創業。現代文と小論文を並行して演習する講座をはじめる。趣味はスキー。

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